THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～｜リアクション

THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～

　鍋によって味付けや具材が異なる今回の鍋会。
　御剣の参加した鍋会は、自身が持ち込んだ昆布などの出汁に味噌を溶いたド定番の鍋だ。
「鍋は出汁をしっかりとって味噌で味を調えれば大抵上手くなる。味噌は偉大だ」
　力説する御剣もまた、選ばれし鍋奉行であった。
「さぁ、みんな食うぞ！　いただきますっ！　おーい、橘！　米はないのか米は！？」
「大丈夫なの！　サキリくんがいっぱい買い込んでくれたなの！！」
「やったぜっ！」
　橘が自分の功績のように胸を張って話していた。
　御剣もつられて、両手を天に突き出して歓喜した。
　その脇で、サキリは鍋をつつきながら目を泳がせていた。
「……知らなかったんだ、あの布団が１枚100万円もするなんて……」
　リサイクルショップでの買取金額は大幅に下がったが、それでも売った布団は分厚い１万円札の束に化けた。
「然るべきところに売りに出すべきだったか？　そうすればあの札束の何倍もの金額に……いや、やめよう」
　欲を出すと人間は駄目になる、そんな話を聞いたことがある気がしたからだ。
　かくして、買出し班の資金は潤沢であった。
　普段は手が出せないような食材をしこたま買い込むことができ、米もまとめ買いすることができたのだ。
「僕は役割を果たした。それでいいんだ、それで……」
　彼はリサイクルショップで見せた真摯な態度を思い出し、人間のあり方を自問自答しながら鍋に手を出してた。
「あぁ、食材が足りないのか？　なら僕が刻んでくる」
　そしていつも以上に率先して手伝いに向かうサキリ。
　刃物の扱いに自信がある彼は、文字通りサクサクと野菜や肉を刻みまくっていた。