THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～｜リアクション

THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～

　骨削の足元の地面がサラサラの砂になって、踏み込んだ途端に足を取られて動けなくなってしまったのだ。
「悪さする奴はろっこん使って積極阻止だ！　皆の暮らしを壊すなよ！」
　八神のろっこん【分解】で、骨削の進行上の地面を分解して砂粒にしておいたのだ。
「ただ足を取られるだけじゃ駄目だよね……」
　夏夜が猫シールを骨削の額に貼り付けると、体が急に何倍にも重たくなってしまった。
　これが彼女のろっこん【重く軽く】だ。
　動けなくなった骨削は、懲罰対象として為す術なくダメージを受けていく。
「とりあえず、今回も照明代わりになってもらいましょうか……」
　深縹は骨削の後頭部をろっこん【我が紋章は、光り輝く道標】で発光させた。
　何も知らない人物が見れば、“あの人、やけに後頭部が光り輝いて……あっ（察し）”的な感じの輝きだ。
「悪さをするたびにハゲが増すから。ハゲマスから」
「あっしはハゲてないよぃ！　こうなったらこれでどうだい！？」
　骨削はやぶれかぶれで燃え盛る松明を布団に投げ付けた！
　キケン！
「させるかああああァァァァァァァ！！！」
　伊賀解理、魂の咆哮ッ！
　ろっこん【代理告白】のビームをメガネから発射！
　ビームが松明を捉えると、ジュッと物凄い音を立てて松明は空中で消し炭になってしまったではないか！
　これには伊賀本人自身がビビっていた。
「なん……だと……！？　リア充になった僕の真の力が発揮されたというのかー！？」
　説明しよう！
　伊賀解理は最近、意中の男性から告白されたのだ！
　そして今はその彼と恋仲となり、毎日が幸せ全開なのだ！
　さらに説明しよう！
　伊賀のろっこん【代理告白】は、頭に思い浮かべた（恋愛関係に限る）人物の好感度によって出力が増減する。
　つまり、今の伊賀のろっこんは、過去最高の集中力を誇るのである！！
「骨削氏、悪いが【彼】との愛の巣を燃やすわけにはいかないのでね。ちょっと『オハナシ』しようか？？」
　伊賀のメガネがギラギラと輝いていた。
「あ、僕も少しオハナシしたいなぁって」
　日暮ねむる、参戦ッ！
「これから売り物になる貴重な高級羽毛布団を全焼させられたら困るからね？　今回ばかりは瓢くんを擁護できないなあ……」
「埋めるのか？　穴掘りなら任せろ！」
　八神は【分解】で地面に蟻地獄を作る気満々だ！
「あ、スコップならスケッチブックに封印してあったな……」
「お、おう……」
　旅鴉の用意周到さに八神は舌を巻いた。
「何が起きるんです？」
　綾辻が恐る恐る尋ねた。
　旅鴉がそれに答えた。
「農作業だよ」
　日暮のろっこんで眠らされた骨削が、八神と伊賀と御剣、そして夏夜に担がれていく。
　彼らの手には旅鴉のスケッチブックに封印されていたスコップが。
　行く先は猫鳴館の畑方面。
　旅鴉はこうとも言った。
「あれ、なんだか分かるかな？　骨削の苗木だ」
「うわぁ……」
　綾辻は露骨に引いていた。
「……埋められるくらいなら、なんで懲りないんでしょうね、あの人？」
「綾辻、それを私に聞かないでくれ」
　旅鴉は肩を竦めていた。

　このあと骨削は首から下までずっぽりと植えられてしまった。
　彼は鍋に夢中になった寮生に忘れ去られ、骨削も日暮のろっこんで眠りこけていたせいか、丸１日、誰にも気付かれないという奇跡が起きてしまうのだ。
　翌々日の朝、自治会長の橘がようやく気付き、鎌を持ち出して骨削を収穫しようとする騒動が起きるのは、また別の話である。