THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～｜リアクション

THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～

　作業に従事していた面々が一斉に注視する。
　すると、その影は突然、猛スピードでこちらへ駆け寄ってくるではないか！
　黒い影はケタケタと笑い狂いながら、棒状の先端になにか液体を掛けている！

「灯油だよぃ！　イヒヒヒヒーッ！」

　暖房用の灯油のポリタンクを羽毛布団に向けてぶん投げる！
　激突しないように作業員たちが回避すると、布団の一部にポリタンクの中身が浴びせられてしまった。
　そして骨削はライターで棒の先端に点火！
　松明だ！
「イヒヒヒヒヒ！　今夜は鍋らしいねぇ？　ならばたくさんの火が必要じゃろ？　それには燃料と燃やすものが必要だねぇ？　おっと、目の前によく燃えそうな布団があるじゃないかい。それを燃やして今夜は暖をとりながら鍋をつつこうじゃないかぃ！！」
「「ただの放火魔だコイツゥーッッッ！！！！」」
　布団の使用方法が間違いすぎてて何も言えねぇ……。
　どうやら残念なことに、骨削の思考には“布団に潜って暖を取る”という発想はなかったようだ。
　これには伊賀班長も御冠だ！
「何かを燃やして寒さを凌ぐって、猫鳴館の民度をなんだと思っているんだ骨削氏！」
「原始人レベルじゃろ？？」
　骨削は即答だった。
「駄目だコイツ……。　お願いだ、これ以上、終身ボケ属性の僕をツッコミに回さないでくれ！」
「知ったことか！」
　骨削は迷うことなく灯油の掛かった布団の１枚に火を放った！
　空気を溜め込んだ羽毛布団は一気に延焼していく！
「おいやめろ！　１枚100万円するんだぞ！！」
　御剣がろっこん【加速】で燃え盛る布団を間一髪で布団の山から隔離することに成功した。
「なんてことをしてくれるんだよぃ！？」
　骨削が憤慨する。
「まったく、おたくらはいつもあっしの邪魔立てばかり！　鍋の火をくべて寮生を寒さから守ってやろうというあっしの親切心が分からないのかぃ？」
「またあなたですか……懲りませんね……」
　深縹はなんとなくだがデジャブを感じていた。
　皆の渋い顔に骨削の機嫌は徐々に悪くなっていく。
「面白くないねぇ？　でっかい火柱で焚き火すれば寒さなんて吹き飛ぶよぃ？　まぁ、館や九夜山に延焼するかもしれないが、あっしのしったこっちゃないしねぇ」
　骨削は燃え盛る松明を構え直すと、怪しく口を大きく横へ開いた。
「邪魔建てするなら押し通るまでだよぃ！」
　骨削は走った。
　止めようとする綾辻や後木をかわし、神野と郡の手をすり抜け、橘の抑止の声にも耳を貸さず、彼は布団の山の目の前まで躍り出た。
「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒ！　聖火点灯ォッ！　メリークリスマ……」
　だが突然、骨削はそこから先へ進むことはできなかった。