THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～｜リアクション

THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～

　館内では運搬された布団の仕分け作業に追われていた。
「出来ればサンタのプレゼントは靴下に入るサイズでお願いしたいが……」
　高級羽毛布団という変わり種のフライングクリスマスプレゼントに、サキリ・デイジーカッターは当惑してた。
　しかし、彼のおかげで布団はみるみるうちに仕分けされていった。
「そろそろ運搬よりも仕分けに取り掛からないと。闇雲に部屋に突っ込むだけでは駄目だから」
　運び込まれた布団を神野と郡と連携を取って各寮生へ分配。
「分かったわ、私たちはこっちを担当するわね」
　サキリの指示に神野は素直に従った。
　運搬に精を出していた後木も合流する。
　……実は先程まで、後木は布団の山の山頂部分から拝借した布団を自室に引き入れて堪能していた。
　後木は自室で体操選手のように片手を上げたあと、猛ダッシュで跳躍。
　ゆか運動のように空中３回転半捻りを決めると布団にダイブ！
　その後、布団に包まって４回転ジャンプからのステップシークエンスに移行した。
　５分前の後木はやり遂げた。
　オフトゥンプログラムのショートとフリーを合わせた総合得点が自己ベストを記録したのだ。
「うーん？　外に出るだけならトイレの窓でも１階の誰かの部屋からでも簡単に出られるのだ問題はそこじゃないのだ。邪神オフトゥーンさまが御下賜下さった神具をどうするか、それが問題なのだ！」
　そして後木は閃いた。
「大広間とか開かずの間とか空き部屋いっぱいに詰め込むと良いと思うのだこれで誰でも冬を凌げるし地下帝国も使えるし名案なのだ～！」
「後木、その発想は既にあった」
「ぎゃふんっ」
　サキリのツッコミに後木は思わずひっくり返った。
　彼らは結局、余った布団を予備用と来客用として確保。
　それでも出る余剰分は、綾辻の希望により裁断してリメイクするとのこと。
「保管する際には極力かさばらないようにしないと……。あれを使うか」
　そこでサキリが倉庫の奥から引っ張り出してきたのが、布団圧縮袋と掃除機５台である。
　彼はひたすら袋に布団を詰めては掃除機を稼働させて圧縮し、丸めて担いで空き部屋へ運ぶルーティングを繰り返す。
「しかし、この布団は本当に出来のいい布団だ。ひょっとしたら本当に高級品だったりするのか……？」
　よもや、１枚100万円もする最高級品だとは、この時のサキリは知る由もなかった。
「よし、道が開通したら余剰分をリサイクルショップへ売ろう。食材の購入資金の足しになるだろう」
　繰り返そう。
　この布団が１枚100万円もする最高級品だとは、この時のサキリは知る由もなかった。