THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～｜リアクション

THE　FUTON　～猫鳴館防寒大作戦、決行せよ～

　橘と伊賀が布団の中から救出された。
「やれやれだ……」
　伊賀は奇妙なポーズで自身の無事を安堵した。
　一方、橘は布団に魅入られて「スヤァ……」と寝息を立てていた。

　その頃、綾辻綾花は大量の布団が必要そうな場所へ手配すべく、各所の連絡に奔走していた。
「ええ、はい。とてもモノ自体はいいものです。外に放置されていたので洗濯は必要でしょうけど……。本当ですか？　ありがとうございます！　では後日こちらから伺いますね、失礼します」
　寝子島の児童施設の１つに布団を手配できた綾辻はほっと一安心。
　既にこの他にも保育園への手配も取り付けてあり、彼女のフットワークの軽さを物語っている。
「そうだ、実家にも贈ろう。いい布団だから気に入ってくれるといいなぁ」
　綾辻は余りそうな布団の配分に余念がない。
　これなら、道を塞ぐ布団も全て有効利用できそうだ。

　神野美野梨は布団とダンボールを交互に運搬して鶏小屋へやってきた。
「隙間風を防いで熱を逃がさないのには段ボールを壁に沿って並べるのが効果的だわ。このために寝子祭で使った段ボールを保存しておいたのよ」
　更に布団をダンボールの間に挟めば断熱材のように寒さをブロック！
「館内も同様に処置を施したいわね」
「うち、手伝う！」
　郡トモエは先程から神野の手伝いを進んで行っていた。
　神野もまたひとりで館内の防寒作業は骨が折れると判断し、郡を助手として共に作業を進めていった。
　郡はどうやら今まで真剣に猫鳴館の寒さに何か対策を打つべきだと考えていたようだ。
「これで寮生のみんなお布団が行き渡るね！　あまったら、お客様用……とか、いくつかあったら良いのかな？　大部屋とかで他の人が泊まれたら良いよね！　寮のどこか空き部屋をお布団置き場にするとか……。って、ここは処置完了！　これで廊下を歩いても寒い思いをしなくて済むかな？」
「だいぶ違うはずだわ。羽毛布団は保温性に優れてるもの」
　神野は館内の地図に赤ペンで印を付けて、補修場所のチェックに余念がない。
「美野梨ちゃん、お布団もいいけどお鍋も楽しみだね！　お鍋はみんなで食べた方が美味しいから楽しみだなぁ♪」
　郡が目を輝かせている横で、神野は何ら思案顔。
「確かに鍋料理は体が暖まるから冬には最適ね。でもさらに暖まれないかしら？」
　その時、神野のニューロンに天才級の刺激が走った。
「ねえ、郡さん。ちょっと食事の時に、私の実験に付き合ってくれないかしら？」
「……ん？　実験？　なになに？　楽しそう！！」
　郡は迷わずこの話に乗った。
　……乗ってしまった。