ラン・ラン・ラン！　｜リアクション

ラン・ラン・ラン！　

　この度、一番ハードな逃避行を行っていたのは、キュルビスと寧々子であろう。
　目立つ風体の二人は、とにかくどこでも警察の部隊に追われ続けた。
　さらには、旧市街中の人通りの多い場所である。

　寧々子は消耗していた。
　素人技で、旅行カバンを振り回し警察を振り払っていたが、しょせん素人。
　カボチャ頭の女の子は、カボチャを出して振り払っていたが、肝心なタイミングになると、ふっと姿を消す。
　木の上に逃れたり、叢に飛び込んだりしている。
　そこから奇襲のカボチャを放ってくれたり、支援はしてくれるのだが……。
　スカートが破け、髪もぐしゃぐしゃだ。野宿のほうが、なんぼかましだった。
　猫の鳴きまねで、警官を振り払ったりしもした。
　散々なことになった。

　そして、夜明けがだいぶちかくなった、ある時刻。
　不意に、キュルビスが口を開いた。
　――さっき、木の上で見まシタ。
　――この先、道はフタマタに分かれてるデス。
　ひどく落ち着いた声。
　――警察は、どちらかに罠を張ってイマス……。
　寧々子はカボチャを振り仰ぐ。
　実はキュルビスは、偵察を買って出ていたのか？
　
　――このまま二人で、朝まで逃げるのはムリデス。
　キュルビスが、右を指さす。

　――キュルビスが囮になって、逃がしマス……。
　寧々子は、激しく胸を打たれた。
　彼女は、自分を犠牲にして、寧々子を逃がそうとしているのだ。
　寧々子は一瞬、自分が犠牲を買って出ようともしたが、後ろから警察が追って来ている。
　――サア、右へ！
　時の勢いというものもあり、寧々子は右に走り去る。

　左の道を選ぶキュルビス。

　走るキュルビスの口から、笑いが漏れる。
　
　――まんまと引っかかりヤガったデス！

　警官隊が大勢いるのは、実は右。
　
　――ワルいけれど、キュルビスが逃げるため、囮になってもらうデス……。

　炸裂する小悪党魂。

　その眼前には、大量の警官。

「ギャー！　間違えたデース！」

　自ら警察の本体に突っ込んでいったキュルビス、あえなくここで逮捕。