ラン・ラン・ラン！　｜リアクション

ラン・ラン・ラン！　

「日暮――お前もか？」
「あっ、また武道ちゃんセンパイなのだ～！！」
　運命のクロスロード。
　旧市街で逃走を続けていた二人、ここで友人と邂逅する。
「今日はもしや……寝子高深夜徘徊者、一斉摘発日！？」
　真央が言う。
「助けてください、志波先輩。警察に追われてるんです」
　信頼する先輩に、刀は思わず弱音を吐く。　
　――何か、後ろ暗いところでもあるのカイ？
「違うんです。俺たちは何もしてないのに……。え、先輩もですか」
　にこやかに笑う刀。
「神魂のせいなら、しかたないよね！」

（下宿先、潜伏されていそうだな……）
　今日は勉強会、ということで電話を入れた志波武道。
　学校の友達とばったり会って、今日は泊まるという内容にした。

　持ち前の体力を生かし、孤独に追撃をかわしていた彼も、状況が明らかになるにつれ、自分と同じ立場の人間が多いことが分かってきた。
　見知った友人も多かった。
　積極的に戦い続けていたねむるを見つけるのはたやすかった。
　時には堂々と、時には隠れて、彼らは戦い続けていた。

　武道は、汗でぬれたインナーを風に晒す。
　寒いので、上着を羽織っていたかったのだが、校内ジャージは目につくということで、冬の最中にインナーのみで彼は走っていた。
（どうせ走ったら、あったまりそうだしな……）
　脱衣を愛する彼だが、まさか冬の寝子島で、真夜中に脱ぐとは思わなかった。

「……知ってる。神魂のせいだよ」
　刀はねむると情報交換する。「ただ、俺たちそれだけじゃ説明できない後ろ暗いところ、あるけどな」
　あっさりと自分の過去を認める。
　ねむるは苦笑し、タイムラインで見かけたあの言葉を、友人につたえるべきか、悩む。
　蒼鴉会。黒根。
　それを聞いたら、彼はこの件に本格的に深入りする。

　それは彼を危険にさらすことだし、何より黒幕の思うつぼにはまることになる。
　唇を噛みしめるねむる。それを見る円。
　
　――見つけたぞ！
　その時、一際大量の警官隊。
　水にぬれ、股間をつぶされ、怒りに燃えている。

「やばい！」
　一同、蜘蛛の子を散らすように、逃げ出す。
　先般やられたと思しき、ずぶぬれの警察が円にとびかかる。
　あわや間一髪というところで、円が振り返る。
「ボクの武器は猫！」
　叫んで、にゃーくんとずいっと出す。
「油断したね！」
　
　恐怖の殺し屋、キャット＆スモール！
　凶悪な写真と、経歴を想起して、警官が怯む。
　
　その隙に、身を翻して逃げる。
　鮮やかなブラフだった。

　それぞれに逃げる中で、日暮ねむるは追い詰められていた。
　ジグザグに走り、相手を抑えこんで、ろっこんで眠らせる。
　的確だが、実にこちらの体力も消耗するやり方。
　
　夜に、サイレンの音が響く。
「包囲網は、できあがっちゃったか……」
　組み伏せた警官を見つつ、つぶやく。
「これは覚悟を、決めなきゃだね……」