お見合い狂想曲っ！｜リアクション

お見合い狂想曲っ！

霧桐舞衣の運転する自動車は、『spraoi』に急ブレーキで横付けされた。助っ人たちが急いで大橋先生を先導する。
「先生！お店だから玄関で靴を脱がなくてもいいです！」
　店に入ったところでハイヒールを脱ごうとした先生を止めた時、刀はあることに気づいた。先生は、見合い相手の写真を見た直後に、必ずうっかりミスをしている！
「先生、事あるごとに写真を見ていたら更に時間がかかります。それだけ頻繁に見てるんですから、心に焼き付いているでしょう？」
「御剣君―――？」
　刀は、ひとまず先生に写真を見ることをやめさせることにした。
「その人の顔を思い浮かべながら、心の中で謝ればいいんです。これから会うんですから、それだけで十分じゃないですか。あとは実際に会ってから存分に謝りましょう」
「確かに、そうね」
　先生は、ポケットに入れかけた手をそのまま出した。

　欲望のまま注文して、湯気のたった料理が目の前にずらりと並ぶ。しかし、木鈴寧々子の心は弾むどころか沈んでいた。原因は、目の前のテーブルの男女だ。

「ごめんなさい～、待ちました？」
「いいえ、ほとんど待ちませんでしたよ」
　まさにお見合いです、と言わんばかりの二人。いやお兄さん、君そわそわしながら待ってたでしょ？
「弾む心と、沈む心。一文字違うだけで、こんなに違うんだ～、感心」
　別に、人の恋愛に嫉妬してハンカチを噛むような面白い趣向を持っているわけではない。『ごくごく一般的な社長令嬢』だった寧々子は、お見合いにあまりいい思い出を持っていないというだけの話だ。
　聞こえてくる二人の会話を聞く限り、お互いが相手のことを気にしていることが分かる。自分がお見合いに嫌悪感を持っているのは置いておいて、この二人なら幸せになって欲しい―――うん、私ってば大人！ ……なのかな？