クリスマスを飾ろう！｜リアクション

クリスマスを飾ろう！

　そんなこんなで友人同士、和気藹々と飾り付けは始まった。
　修は電飾のコードを、エアコンの排気パイプに這わせて店外へ伸ばしていく。
「これはなあに？」
「ツリーっぽい飾りが交互にゆっくり絵を変えるよう、最後に布団枠を白く光が囲った中に、ＧＯＯＤ　ＳＬＥＥＰと、ＭＥＲＲＹ　ＣＨＲＩＳＴＭＡＳの文字が出るようにしてる」

　海美へ答えて、修は敷布団カバーにツリーのパッチワークを縫い合わせ装飾を施しているねむるへ向き直った。
「ケーブルが白いから夜ならラインは見えないよ。昼でも近づかなければ大丈夫さ」
「えっとー……こうかな！　おかおが、うまくいかないー」
　海美が電飾を曲げたり綿を乗せたりと楽しみながら試行錯誤する様子を、三人は微笑ましげに見守っていた。

　こうして最後にねむるが作っていたカバーに緩急材を詰め、脚立に登ってそれを二階のベランダから吊るした。
「こ、こんな感じでどうしょうか？　海美ちゃんっ」
「寝具屋らしくて面白いな」
　海美の歓声に合わせて手を叩いた勘三郎だったが、アイディアが浮かんでゴソゴソ作業を始めた。
「ついでだから、枕にエアクッション詰めて、パジャマ着せてサンタ人形に仕立ててみようぜ」
　これはアイディア自体は悪くはなかったかもしれないが、吊り下げるとなかなか気味の悪い光景になった。人形の出来が良かったのがいけなかったのだろうか。ハロウィーンの飾りじゃあるまいし……と言いたくなるような状態だ。
「中々の存在感だねぇ」
「味があって良いと思うよ」
　ねむると修は褒めてくれたが、なかなかこういうセンスは難しい。
「ベランダに座らせてみっか？」
「さぶちゃんナイス。とりあえず椅子にでも座らせとこう」
「なら手伝うわ」
　勘三郎がカラスの鳴き真似をすると、彼の姿が鴉の姿に変化した。下の三人に指示を送ってもらい、微調整をしようというわけだ。
　

「助かるよ」
　修の声に相槌をうつように、勘三郎はバサバサと翼を羽ばたかせた。

　それから。全ての作業を終えると、彼らは歓声した飾りが暗闇の中で輝く様子を見る為に、一旦店内で外が暗くなるまで待つことにした。
　修が持ってきてくれた軽食のサンドウィッチを配られて、四人はいつの間にか空っぽになっていた胃を満たす。
「俺はコーヒーだ。
　日暮はココア、小島さんはジュースだったよな」
「ありがとう！　つかれたー！」
　受け取ったジュースを一気に飲み干す海美を大丈夫だろうかと見守りつつ、「山田はどうする？」と勘三郎へ聞く。
　彼は既に食物の方へ夢中になっていて、
「うん、一仕事終わらした後のおやつは最高だな！」とパクパク忙しく運んでいた。
「仕事終わりの一杯はうまいね。今日はよく眠れそうだよ」　
　ねむるがココアへ口をつけていたところをみて、修は「あ！」と思い出したように声を上げる。
「折角だから点灯したらイルミネーションの前で、記念撮影しようといかないか？」
「もうのんじゃった！」
「先に言ってくれ！」
「ごめん！」
　修が海美のコップをもう一度ジュースで満たしていると、ちょうど陽が落ちて暗くなる。
「日暮、点灯してみるか？」
　促されたねむるがスイッチを押して、ふとんのひぐらしの点灯式は始まった。
　カメラのタイマーを入れて、皆でぴったりくっつくように集まって撮影した記念写真には、この日の四人の最高の笑顔が写っていた。