俺様の前にひれ伏せ！第一回世界支配者大会、開催！｜リアクション

俺様の前にひれ伏せ！第一回世界支配者大会、開催！

【刃物の世界】

　サキリ・デイジーカッターは、刃物の世界の支配者にして、その世界の王でもあった。

「よく来てくれたね、お客人。このサキリ・デイジーカッターの支配する刃物の国へようこそ」

　サキリはその世界の唯一の人間として、違う世界や他の国からやってくる客人をもてなすことを密かな喜びとしていた。
　実際、その世界には客人が絶えることはなかった。
　というのも、その国では世にも珍しい『刃物』をディフォルメした登場人物（キャラクター）達がところ狭しと活躍しているからだ。
　たとえば、そんなキャラのうちの一人に、反りのある刀身がとっても魅力的な日本刀くんがいる。
「サキリ殿、今日も御客人が現れたでござる。なんでも世界を繋ぐ扉の向こう側から来たのだとか」
　彼はござる口調が印象的な、サキリの忠実な侍従だ。
「……世界？　ああ、うん。わかったよ。とりあえず中庭でお茶の用意をさせるから、そちらにご案内して。くれぐれも丁重にね」
「ハハッ、仰せの通りに」
　日本刀くんが平伏して頭を垂れると――刀の先が地面に刺さって抜けなくなった。
「ぬっ……このっ……動けんっ……これがかの有名な孔明の罠でござるかっ！？」
　日本刀くんは必死に身体を動かすが、もはやぶっすり地面に刺さった身体は簡単には抜けそうもない。
「……あ、大斧くん。代わりに客人の案内をお願いできるかな？」
　サキリは実直だがちょっと――いや、かなり抜けたところのある（今は逆に抜けなくなっているが）日本刀くんに苦笑しつつ、また別の刃物の住人にそう声をかける。
「承知。だが、儂がぶった斬ってしまってもいいのだろう？」
「うん、全然よくないからね？　くれぐれも丁重にね。本当にくれぐれも丁重にね」
　大事なことなので二回言いながら、サキリは大斧を客人の迎えにやった。どうにもこの世界の住人はみんな血の気が多いのが玉に瑕だ。
　それから日本刀くんを地面から抜いてやる。
「殿、かたじけのうござる……。拙者は拙者は自分の至らなさがくやしゅうて、くやしゅうて……」
「ああ、いや。君は今のままの君でいいと思うよ」
　その方が面白いし、という言葉は喉の奥に飲み込んでサキリは日本刀くんに優しく微笑みかける。
「殿……！」
　日本刀くんは感極まった表情でサキリを見つめる。
　そんな彼らを大変に愛おしく思いながら、サキリは客人をもてなすために中庭に移動を開始する。
「さあ、ボクらも客人のもとへ急ごう。放っておくと、大斧くんが客人をぶった斬りしかねないからね」
「ハハッ！」
　今度は学習して、やや高めに頭を垂れる日本刀くんに、やはりサキリは彼らをとっても愛おしく思う。
「あ、そうだ」
　と、そこでサキリはもう一つ用事を思い出して、そばにいたまた別の刃物の住人に声をかける。
「包丁くん、客人をもてなす料理の支度を頼むよ」
「御意。して、客人も一緒に料理してしまっても？」
「うん、駄目だからね？」
　やはり彼らは愛おしい。本当に血の気が多すぎるのが、玉に瑕だけれども。