俺様の前にひれ伏せ！第一回世界支配者大会、開催！｜リアクション

俺様の前にひれ伏せ！第一回世界支配者大会、開催！

【オトメゲエムな世界】

　その日、羽生碧南は世界の支配者になった。
「……What?」
　思わず英語になるぐらい意味がわからなかった。
　しかし、ここは寝子島だ。ある日突然支配者にされてもおかしくはない。
　だが、
「……全然実感わかないなー」
　と、少しつまらなさそうに碧南は言った。
　だって、今、目の前に広がっている世界は、いつもと何も変わらない。
「……ん？」
　そのとき、碧南はいつもの寝子高の看板に、いつもと違う文字が書かれていることに気づいた。
　そこには――。
『私立イケメンワンダーランド高校――略してイケワン高校』
　と書かれていた。看板に略称書くなよ。
　とりあえず状況はなんとなくわかってきた。
　確かによく見れば周囲はイケメンばかりで、しかも女子は自分一人しかいなかった。
「ということは……私がこの寝子島でただ一人のヒロインなわけー！？」
　碧南は思わず絶叫していた。
　と、そこに颯爽と一人のイケメンが駆けつけて、こんなことを言う。
「どうした、碧南？　何かあったのか？（ｷﾘｯ」
（わあ、頭悪そうなイケメンだ！）
　颯爽と現れたイケメンに碧南はわりとヒドいことを思った。
　ちなみにそのイケメンさんのことは顔も名前も知らなかったが、碧南は特に気にしなかった。
「ううん、なんでもないよ。ところで、貴方のお名前なんだったかなぁ？」
　碧南がそう訊くと、イケメンさんは、

　Σ（゜△゜ﾊｳｧｯ!?

　という顔をした後、
「は、ははっ……。冗談キツいな……。俺はお前と同じクラスで隣の席の池面太郎（いけめんたろう）だ。忘れたとは言わせないぜ？（ｷﾘｯ」
　と素早く立ち直って、またキメ顔で言った。
「あ、うん。そうだったね。すっかり忘れてた。ゴメンね☆」
　とりあえず、碧南はヒロインっぽく謝った。
　すると、面太郎はまた

　Σ（゜△゜ﾊｳｧｯ!?

　という表情をして、その場に膝をついた。
「……あー、その、ゴメンね？」
　別に碧南は何も悪くないのだが、ここまでショックを受けられるとちょっと申し訳ないような気持ちにもなってくる。
　と、そのとき。

「ハハッ、ざまぁないねっ、池センパイ！（ｷﾘｯ」

　また新たなるイケメンがキメ顔で姿を現した。
「……む、お前は」
　面太郎が渋面をつくって顔を上げる。
「同じクラスで隣の席なのに名前を忘れられるとかキャラが薄いにも程があるって感じだよね。ね、羽生センパイ☆」
　新しいイケメンは碧南に気さくに微笑みかける。
　しかし、彼女は彼の名前も当然に知らない。
「……えっと、そういう君は――誰だっけ？」

　Σ（゜△゜ﾊｳｧｯ!?

　碧南が訊ねると新たなるイケメンはひどい顔をしてショックをうけた。
「や、やだなぁ……。ボクの顔と名前を忘れるわけがないよね……！　イケワン高校中等部在籍で、この島のアイドル――美少年次郎（びしょうねんじろう）をっ！」
　新しい方のイケメン――次郎はやはり決め顔で名乗った。
「ふっ……。お前の方こそアイドルのくせに顔を知られていないとか致命的だな。というか、お前、本当にアイドルなのか？」
「ああん！？　なンだとコラァ！？」
「あ゛あ゛！？　やンのかゴルァ！？」
　互いの胸倉を掴みあう面太郎と次郎。
「やめて！　私のために争わないで！」
　物凄くイキイキとした顔で、碧南はそんな二人の残念のイケメンの間に割って入った。

（正直、まったく萌えないけど、とりあえずイケメンだし、もうどうでもイイッ！）

　そんな感じで、とりあえず現状を全力で楽しむことに決めた、そんな本日の羽生碧南なのであった。