俺様の前にひれ伏せ！第一回世界支配者大会、開催！｜リアクション

俺様の前にひれ伏せ！第一回世界支配者大会、開催！

【強さを求める者達の世界】

　御剣刀は、その日も、素振りをしながら挑戦者を待っていた。

「さて、今日はどんな奴がやってくるのか」

　刀は、世界の支配者としての自覚はなく、ただ己の強さを追い求める求道者として、その世界に存在していた。
　彼は、その世界でも、神社で毎日剣の稽古をしていた。
　そんな彼の強さの試すかのように、どこからともなく異世界からの挑戦者が現れるようになった。
　昨日も挑戦者は現れた。
　今日も、そして明日も挑戦者はやってくるだろう。
　刀はそれらの挑戦の全てを受けて立ち、勝ち続けてきた。
　そして、これからも勝ち続けるつもりだった。

（俺はもっと強くなりたい。そのためにも、俺はどんな敵が相手でもその挑戦を受け続けるだろう）

　そのとき、刀の後ろで何者かの現れる気配があった。
　刀は新しい敵の出現に、ふっと息を漏らし、素振りの手を止める。

（そうさ。たとえ、どんな奴が相手でも――）

　そして、刀は振り返り、その挑戦者の姿を見て――

（゜△゜）

　思わずこんな顔になった。挑戦者はふんどし一丁に馬の被り物をした薙刀使いで変態のおっさんだった。
　刀は前言を撤回したくなった。こいつとは戦いたくなかった。
　しかし、
「その太刀筋、さぞ名のある武芸者とお見受けする。是非とも拙者とお手合わせ願いたい」
「え……？」
　落ち着いた声音で、礼儀作法にもかなった言動に、刀はその男に対する認識を改めた。
（……そうだな。見た目で人を判断するのは未熟者のすることだ）
　刀は自らの不明を恥じいるように頭を振ると、改めて挑戦者に向き直った。
「いいだろう。その挑戦、受けて立つ。俺の名は御剣刀だ」
　刀は木刀を構えて、名乗る。
　それに対し、男もまた薙刀を構えながら名を名乗った。

「拙者、鹿と申す」

「……え？」
　刀は、思わず木刀を取り落としそうになった。男は馬の被り物をしていた。
「もう一度言ってくれないか？」
「拙者、鹿と申す」
「……馬、じゃなくて？」
「然り。拙者、あくまで鹿ですから」
　男は一歩も譲らなかった。
「……わかった」
　刀は頷いた。本人がそう言っているのだから、そうなのだろうと納得することにした。
「よし、いつでも来い」
「では、いくぞ！　ヒヒヒィィイイイイイイインッ！」
「やっぱり馬じゃないかッ！？」
　裂帛の嘶きとともに薙刀を振り下ろしてくる男に、刀は叫んでいた。
　刹那、薙刀と木刀が、音を立ててぶつかり合う。
（くっ……。コイツ、変態だけど強いッ！？）
　息を吐く間もない連撃に、刀は反撃の隙を見つけられない。
「ふはは！　どうした？　防戦一方ではないか！」
　男は先程までとは別人のような狂気をはらんだ声で、刀を挑発してくる。
　だが、刀はそんな挑発には乗らない。
（まだだ。どんな手練れにだって、必ず隙の生じる瞬間があるはず……。よし、今だッ！）
　次の瞬間、刀は動いていた。
　男の薙刀の一撃を最小限の動きでそらし、生じた隙を突いて、一気に木刀を振り抜く。
「ぐああっ……！？」
　会心の一撃が決まった。
　男は倒れ、動かなくなった。
「ふぅっ……。やったか」
　刀は放念の息を吐いた。しばらくは動けないだろうが、死んではいないはずだ。
「って、やばい……。遅刻だ……！」
　刀はハッと我に返り、木刀をしまって、通学路を急ぐ。
　だが、そこにまた新たな空手の道着を身につけた男が現れて、刀の前に立ちはだかる。
　男の気迫は馬の被り物の男のそれを遥かに上回るものだった。
　それを見て、刀はニッと笑う。
　敵が強ければ強いほど、彼の血は滾るのだ。

　そうして、彼の戦いはまだまだ続いていく。いつか夢が醒めるまで。あるいは夢から醒めても彼の戦いはまだ続くのかもしれない。

このページにイラストを設定する