こどものころのおはなし｜リアクション

こどものころのおはなし

　７　ＳＦファンの集い

　何気なくスマートフォンを見ると、新しくメールが届いていた。
「グランパからメールが……」
　ブリジット・アーチャーの祖父は、サンフランシスコに住んでいる。遠く離れているから会うことは滅多にないが、彼女は祖父が大好きだった。祖父は、米国産ＳＦを始め、日本のアニメにも詳しい。
　メールには、画像が添付されていた。黄、赤、緑のスーツに身を包んだ人達の中央で、色鮮やかなデザインの椅子に座った祖父が脚を組み、満面の笑顔を浮かべている。
　日本でも名の知れた、宇宙探検を題材にしたＳＦシリーズのコスプレ写真だ。祖父が座っているのは、艦長席だった。
（ほんと、グランパ好きよね）

　祖父は、このＳＦシリーズのファンの集いに毎回参加している。この集いには、全米はおろか世界中からファンが集まってくる。
「そういえば、私も昔連れて行ってもらったわね……」
　子供の頃に、一度だけ連れて行ってもらった。
　小学校２年の時だったと思う。子供用のスーツを着せてもらって、出席した。

∞

（なんだか、仮装パーティみたい！）
　ＳＦシリーズに出てくる各艦隊の制服を着た人達が、会場いっぱいに集まり談笑している。その中にいるだけで、楽しかった。
　日本人ぽい人を見つけて、小さなブリジットは話しかける。
「こんにちは！　日本から来たの？」
　その人は、目線を下げてブリジットを見ると、にっこりと笑った。
「そうだよ。お嬢ちゃん、日本語上手だね」
　外見が、というか彼女は生粋のアメリカ人なのでそう言われるのも無理のないことだ。
「私、日本に住んでるのよ！」
「そうなのか。なるほどね」
　そうやって、参加者に話しかけたりしてパーティーを楽しんだ。

∞

（でも、ホントのこと言うと、グランパには悪いけど私はＳＦよりミステリー物の方が好みなんだけどね）
　やっぱり、ＳＦって男の子の趣味かなって気もするから。
　転送装置とか、瞬時に液体になれてわずかな隙間から出入りできる宇宙人とか持ちだされると、密室トリックが成り立たなくなるのも痛い。
「ん、メールの最後……」
　そこには、追伸文が打たれていた。
『今度また一緒に行こうな。だけど、ママには内緒だぞ』
　と。
（ふふ……『いい加減大人になって、お父さん』って言われるもんね……）
　微笑ましい気分で、ブリジットはスマートフォンをしまった。
「またいつかね、グランパ。楽しみにしてる」