クリスマスのあしおと｜リアクション

クリスマスのあしおと

「さて、と……」
　目的地のスーパーに辿り着いて早々、レナートが取り出したスマートフォンの画面を皆で囲みながら、頼まれている買い物内容を共有する。
「結構材料バラバラだなぁ……皆、何作るんだろ？」
　首をかしげる英二へ、エリセイが画面を指先で示し「この辺は検討つくけど——」と続ける。
「粉とかスパイス類は大体店にあるからな。買ってくる必要があるのは大体野菜とか、その辺」
「じゃあその野菜から先に買ってこうか」
　レナートがスマートフォンをポケットに突っ込むと、直治がこくりと頷いた。叔父の店の手伝いをしている関係もあって、スーパーでの買い物は慣れたものだ。
「野菜なら今居る反対側のコーナーだから、向こうに」
　と、先導する彼にくっついて、イリヤがショッピングカートを押して続く。
　他の小物も見て行きたいと言う時子と一旦離れ、彼らは目的の買い物を進めていた。クリスマスソングの流れる店内を興味津々な様子で見ている師呉を、ロベルトが微笑ましげに見て声をかけた。
「この店は飾り付けも済んで、すっかりクリスマス気分だね。なんだかわくわくするなぁ」
「色々あるんだ……」
「ケーキはこの時期ともなると予約が始まってるし」
「惣菜とか、肉とか、パーティー意識したっぽい大きめのパックも出てるよね」
　レナートが言うと、英二が「年末って人集まりますもんね」と頷く。
「もう今年終わるよー。何もしてねぇなー俺！」
　エリセイが盛大に吐いた溜息に、自分もそうだと皆で笑い出す。それぞれこの一年にあった出来事を振り返っていると、ロベルトが長い瞬きから目を開いた。
「一年あっという間だな……。でもこれから賑やかになってくるから楽しみだ！」

＊　＊　＊

　こうしてスーパーでの買い物を終えた三兄弟と５人がミルクホールにきたのは、日の入りの数十分前だった。日の短い冬の天気で皆気にしていなかったが、ドアベルを鳴らしながら入ってきた彼らを見るなり、康子が慌てて駆けてきた。
「お帰りなさい皆。良かったわ、あとちょっとで雨が降るって予報だったのよ」
「ん？　……ああ、本当だ」
　一番後ろにいたエリセイが、空へ掌をかざして頷く。
「今ポツってきたよ」
「あらやだ。強くなるといけないから、あんまり遅くならないようにしないと。
　皆、もう中で準備してるから持って行ってあげましょ」
　忙しなく踵を返した康子に続いて、彼らは店の奥のキッチンへ行った。