【お三夜】寝子島らんちゅう品評会〜お猫様はご遠慮下さい〜｜リアクション

【お三夜】寝子島らんちゅう品評会〜お猫様はご遠慮下さい〜

【猫？天国パート2】

「猫の泉とはここのことか。いやいや、もはや猫天国か」

　臨時の猫広場となった神輿社に案内されたベルトーニは、歓喜の震えが止まらなかった。
　辺り一面、猫、ねこ、寝子、ネコ。
　これこそまさに求めていたもの。寝子島に来た目的はここにあったのだ！　と思わざるを得ない。
　隠しようがない喜びを満面に浮かべながら、さっそく準備を始める。
　まずは倉内に置かれていた猫用おやつやマタタビが少なくなっていたので補充する。
　
「うんうん、美味しいかい？　たくさんお上がり」

　出口の戸は狭めておき、猫じゃらしや玩具も追加する。
　デジカメで猫達を撮影し、外見的特徴を記録していく。
　野良猫は人間への警戒心が高いこともままあるが、寝子島の場合はむしろ人間に友好的な個体が多い。
　そうであってもベルトーニは慎重に接する。ゆっくりと様子を見ながら接触し、問題無いようなら性別確認と簡易診察も行っていく。

　確かにしっかりした生態調査兼診療行為なのだが、どうにも緩みっ放しな表情から無類の猫好きであることも伺えた。
　さらに。

「お嬢さん、この神社の巫女さんですか。その装束、良くお似合いですよ。ぜひこの神社の由来についてお話を伺いたいですね。のちほどお茶でもしながらいかがですか？」
「え、あの、その。申し訳ありません。まだお仕事もありますので」
「ああ、困らせるつもりではなかったのです。あまりに貴女が魅力的だったものですから」

「可愛いパペットですね。そして貴女もまた可愛らしい。猫がお好きならいろいろとお話ししませんか？　後ほどお茶でも？」
「……ごめんなさい。僕はこれから友達と約束があるから」
「気にしないで下さい。約束があって当然です。貴女のような可愛い方を放っておくようならば日本の男性達は見る目がなさすぎます」

「これはまた素晴らしい猫ですね。貴女も元気溢れる方のようだ。どうですか？　後ほど俺と一緒に猫を求めて散歩でもしませんか？」
「真央ちゃんは夏朝ちゃんと修ちゃんと一緒にお散歩中だったのだ！　センセーも一緒に来るのだ？」
「それは素晴らしい申し出ですがお友達とご一緒なら身を引きましょう。ですが、次はぜひ俺と」

「ああ、三つ編みのシニョリーナ。またお会いしましたね」
「ハイハイ、猫さんをお願いしまーす。それではまたー」
「つれないところも素敵ですよ」

　猫を抱えてくる女性陣一人一人に丁寧に声をかけていく。どうやらベルトーニにとっては猫以外でも至福の空間であるようだ。

「……八神君」
「言うな、恵御納。分かってるから……」

　猫を運びつつ憔悴する人物が約一名。きっかけを作った分、少々頭が痛かった。

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