【お三夜】寝子島らんちゅう品評会〜お猫様はご遠慮下さい〜｜リアクション

【お三夜】寝子島らんちゅう品評会〜お猫様はご遠慮下さい〜

【猫好き集団到着！】

「悪い！　もし手が空いてたら境内にいって手伝ってやってくれ！」
「え？　どういうことですか？」
「急いでるんだ！　行けば分かる！」

　寝子島神社の参道前を通った三人組は、御剣と同じように三夜の呼びかけに興味を持った。
　後木真央と恵御納夏朝、そして八神修だ。

　たまたま町中で合流した三人は、こんな日もたまにはいいねと揃って散歩を楽しんでいたところだった。
　まさかその直後、らんちゅうと猫と人の修羅場に遭遇するとは、当然だが予想できるはずもない。

「……これはすごい状況だな」
「猫さん、いっぱいだね」
「修ちゃん！　どうするのだ？」

　八神は素早く辺りを見渡し分析する。
　参道入り口に立てかけられていた看板にはらんちゅう品評会と記してあった。とすれば、今境内真ん中に設置されている数十の洗面器にらんちゅうが入っているのだろう。
　本来ならストレスに弱い金魚のはず。洗面器の数の含めて動かさない方がいいと思うが、猫の数が尋常ではないし、もう既に移動が始まっている。ここで下手に声をかけたら混乱の元だ。
　様子を見る限り運搬班は非常に慎重かつ落ち着いていた。らんちゅう飼育者が中心だから扱いには詳しいだろう。先頭にいる大学生ぐらいの女性が全体に声をかけているせいか、行動にまとまりがあった。
　比べると、猫と対面している方が手が足りていない。御剣は見惚れるほど的確な牽制によってたった一人で多くの猫集団をおさえているが、他の男性が危なっかしかった。
　猫の一割は御鏡の元にいる。猫達の仕草からマタタビを使ったように思われる。
　八神は情報を整合してすぐに決断した。

「移動はあの人達に任せて、猫をなんとかしよう。真央は御剣と一緒に猫達をおさえてくれ。その間にこちらも準備するから」
「分かったのだ！」

　後木はがおーと共に猫軍包囲網へ走る。

「恵御納は俺と一緒にこっちに」
「うん。……どうするの？」
「本能による行動ならやはり本能で対抗するしかないと思う。御鏡の方に引き寄せられた猫がいることを見ると、ご飯やマタタビで誘導することは可能だ。猫用のおやつ、持ってるだろ？」

　さすが猫好きな二人。ともにバックからマタタビ粉や猫ササミ、猫用の玩具を取り出す。
　八神は猫に囲まれている御鏡の元へ行くと、声をかけた。
　
「御鏡、いきなりで悪いが神社内に猫を集めても問題ないような戸締まりできる空間ってあるか？」
「え？　えっと、今お三夜お祭りで使う神輿を点検のために移動させていますから、神輿舎が空いてます」
「それだ。その中に猫用の寛ぎ場を作る。恵御納、持ってる餌や道具でまずこちらへ誘導してくれ」
「うん、わかった。……御鏡さんもよろしくね」
「はい！　よろしくお願いします。さあ、猫さん、こっちですよ〜！」
「猫さん、ほら……こっちにおいしいものがあるよ！」　

　御鏡と恵御納が餌やおもちゃで猫の気をそらせるのを確認すると、八神は急いで神輿舎を目指した。
　神輿がすっぽり入る大きさの建物はまさに倉といった感じで、広さも申し分ないと思われた。
　中心に持っていたありったけの猫用おやつと玩具をおく。

「よし、あとは出来る限りここに猫を移動させるだけ……。いや、念のためにもう一手うっておこう」

　八神はスマホである人物に連絡を入れた。最適の環境を整えて現場に戻る。
　しかし、事態はまだまだ予断を許さなかった。

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