【お三夜】きぐるみづくしのお猫様｜リアクション

【お三夜】きぐるみづくしのお猫様

「そこのサラリーマン、白状するのだっ」
　びしっ！
　帰宅途中と思わしきサラリーマンに、真央はだだーんと仁王立ちしてひきとめる。
　呼び止められた武藤剛はとりあえず足を止めた。
「えっと、何かな、お嬢さん」
「真央ちゃんは聞きたいことがあるのだ。寝子島神社のお猫様達に着ぐるみを着せている人を探しているのだっ」
「なるほど。そういえば最近着ぐるみを着ている子達が増えていたね。てっきり、寝子島神社もお三夜準備かと思ったけれど、違うのかい？」
「ちがうのだっ、誰かが着せて回っているのだ。真央ちゃんはそれを止めたいのだっ」
「どうしてだい？」
「かわいーーーけど、かわいいけどっ。お猫様達が困っているのだっ」
「暖かそうだけれどね。着ぐるみを着ている子を見かけたら、脱がしておくよ」
「助かるのだっ、またなのだっ」
　ぺこっと頭を下げて、真央は再び全力で走り出す。

「天音ちゃん、まって欲しいのだっ。聞きたいことがあるのだっ」
　ぜーはーぜーはー。
　腕の中にがおーを抱っこしながら走り回った真央は、もう、くたくただった。
「どうかしたの？　そんなにあせって大変そうなんだよ」
「そうなのだ、大変なのだっ。寝子島神社のお猫様たちが、着ぐるみを着ているのだっ」
「あぁ、後木さんもなんだね。わたしもそれが気になってたんだよ」
　出来るだけ脱がせたんだけどねと、天音は説明する。
「真央ちゃんも脱がせたのだ、でもそれだけじゃ解決しないのだっ」
「犯人見つけなくちゃだよね。悪気はなさそうだから、犯人って呼んじゃっていいのかちょっと困るんだけど」
「見つけて、真央ちゃんはお願いするのだっ。ほんとに着せずに合成で我慢して欲しいのだ」
「これ、後木さんが作ったんだ？　凄く上手なんだよ」
　天音は真央が手にした合成写真を見つめる。
「がおーと一緒に頑張ったのだ」
「後木さんの飼い猫？　ちょこっと抱っこさせて欲しいんだよ」
「かまわないのだ、がおーは懐っこいのだ。がおーも天音ちゃんに抱っこされたがっているのだ」
　ぎゅぅ♪
　もっふんもっふんのがおーに、天音は思いっきり顔をうずめながら抱きしめる。