【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

38.

　――そのとき、雅人が動いた。

　ゆらり。半眼半睡、もはや催眠術によるのか、寝ているのか判然としない様で、妖しく移動する。
　青白い闘気。人のものとは思えない、妖魔じみた気配。
　たじろぐ蛇那伊に、モップを振り上げる。
　打ち下ろされようとした瞬間、モップは空中で爆散する。

「――支援部、今のは反則よ」
　淡々と葉月が告げる。
　抑えた声音ながら、どこか凄みがあって、迫力を感じさせる。
　さすがにモップでの単調な攻撃は、苦しい。
　二度目であるし、ちょっと水泳部ともかぶってしまった。

　じっと雅人は俯く。
　寝ているのか。
　考えているのか。

（支援部の――武器）

　雅人の顔が、刀に向けられる。
　髪がおろされ、表情はわからない。
　ただ、ピンとそそり立ったアホ毛が、何とも言えない不吉さを醸し出す。

　本日何度目かわからない、嫌な予感が刀を貫く。

　とりあえず足の紐を外そうとした瞬間、ぐいとものすごい力で、刀の体が引き寄せられる。
　バランスを崩したかと思うと、足首がギュッとつかまれる。
　猛烈な勢いで世界が回転した。
　眼前に、蛇那伊の顔があった。

　ごす。
　鈍い音が響いた。

　支援部――それは友人を助ける部活。
　もっとも支援部らしい武器……それは支援部の仲間。

　御剣刀。自らを一本の刀として研ぎ澄まそうと、かつて考えていた男。
　本日今ここで、刀は刀となったのだ。
　刀剣が、乱舞したのだった。

　そんな刀を武器にして、攻撃を振るう雅人。
　その光景は、ネコネコ動画で、実況中継で、校内中に配信された。

　地獄のような沈黙が、世界を覆う。

　息をのむ一同。
　
　雅人は動かない。
　次なる攻撃に備え、ジャッジは踏みとどまる。

　しかし、うつむいたまま、じっとしている雅人。
　様子が妙だ。
　まるで、なにかをこらえているような、堪えているようなその様子……。

（……涙？）