＜月華＞闘華降煌　～求めよ、さらば与えられん～｜リアクション

＜月華＞闘華降煌　～求めよ、さらば与えられん～

　超ミニスカのチア服を着てきたのは、姫神絵梨菜。その目的は彼女のろっこん『超音速美脚乱舞』発動に備えての事である。安心していただきたい。ばっちりアンダースコート着用済みである。
（これで心置きなく蹴られるよっ！）
　ツインテールを揺らし、気合十分な絵梨菜。彼女は参加者の多さからスタート直後は大混乱するだろうと睨み、なるだけ自分と体格の似た人の近くへ向かう。と、白い虎の耳と尻尾を生やした恵御納夏朝（の交換人格の夏夜）の姿が。
（夏朝が幸運になるか、影を浄化しやすくなれば御の字だが……）
　流石に呪皇側が福玉に細工をしている事はないだろう、と考える夏夜もまた他者の妨害を考慮し、なるだけ少し早めに走りぬけよう、と考えていた。
「おっ、同じ白虎はっけーん☆　お兄さん嬉しい♪」
　そんな調子なのは志波武道。相変わらずのテンションである。彼もまた白虎の耳と尻尾を生やしており、「いやぁ、なんか面白可愛い姿になってる気がしてテヘ！」と明るい笑顔を見せている。それでも勝負事には真剣に挑むようだ。
「お、志波に恵御納に姫神も参加するのか」
　３人が振り向くと、高野有紀の姿があった。その横には永田孝文の姿もあった。２人とも、この争奪戦に参加するようだ。
「お互い、いい勝負が出来るといいな」
　孝文の言葉に、３人が「はい」と返事を返す。と、２人の教師もまたよい笑顔で頷く。これはこれで面白い事になりそうだ、と思う武道たちだった。

　スタートラインへ並んだ陽太は、ふと傍らに見覚えのあるような男性がいる事に気がついた。まあ、仮面をつけてはいるが……。
（ん？あそこにいるのって白鋼さん？　いや、まさかそんなワケないかー☆）
　と思いたい陽太だが、なんだかんだ言って気のせいじゃないような気がする。
（本人だとして、お忍びで参加しているっぽい？）
　と考察をめぐらせる陽太は、後からこっそり声をかけてみようかなぁ、とか思うのだった。

　＊　＊　＊　＊

　観戦しようと、多くの人たちが空翔船に乗り込んでいる。八神修と椿美咲紀、御剣刀もまた興味を持って福玉争奪戦の観戦に訪れていた。
　船に乗り込んだ３人は既に賭けが行われているのを見、興味を持つ。

　また、奥のほうを見ると綺麗な衣装を纏った華夜が、お付きの巫女を伴ってやってきていた。どうやら彼女も観戦するらしい。
（さすがに声がかけづらいな）
　刀はそう思いながら見ていると、華夜の方が気づいたのだろう。刀たちに手を振った。
「あっ！　華夜さん！！」
　美咲紀が嬉しそうに手を振り、修と刀も応じる。流石に一緒にはいられなさそうだったが、こうして会えただけでなんとなく嬉しい。
　３人は偶然にも華夜の近くに座れ、もしかしたら話せるかもしれない、と思うのだった。そんな彼らの側には、招待された瓜山メイもいた。
「先生も、観戦ですか？」
「はい。高野先生と永田先生も出場しますし、寝子島のみなさんも出るみたいですから、応援したくなって……」
　修が問いかけると、メイがどきどきした様子で答える。傍らでは美咲紀が寝子高の仲間を見つけ、楽しそうに声を上げた。
「ホントですっ！　高野先生と永田先生が志波先輩たちと話していました！」
「他にもいろんな人たちが参加しているんだな……」
　刀もまじまじと見、興味深そうに呟く。
　こうして４人で縁日の食べ物を持ち寄り、楽しく観戦する事にしたのだった。

　＊　＊　＊　＊

　いよいよスタートという頃。
「いい躰で助かる、前も後ろもすっぽ抜ける心配は無ぇ！」
「褒め言葉として受け取っておいてやるさ。ただしこれ以上はお前を先に水浸しにすることも考えるからな」
　そんな軽口を叩き合う亨と純夏。よくみると、亨が純夏に後から組み付いていた。何か、作戦があるらしい。
　そして、少し離れた所にいる蛇那伊は蛇那伊でうふふ、と意味深な笑みを零す。
（最初から必殺技をお見舞いするわよっ！）
（さぁ、遊ぶぜ！）
　蛇那伊が、亨が、にやりと笑う。そして、純夏は肩をすくめた。
「派手に飛ばすぞ。墜落するなよ？」