＜月華＞闘華降煌　～求めよ、さらば与えられん～｜リアクション

＜月華＞闘華降煌　～求めよ、さらば与えられん～

　オカマタイフーンで３分の１の参加者が脱落するも、虎視眈々とトップを狙う者たちもいる。
亮は妨害を雷でいなし、吹いてきた向かい風（＋火の粉）も物ともせず進んでいた。
「俺もこの風を利用させてもらうさ」
　しゅっ、と音を立てて煙を発するは発炎筒。それで後続の選手を妨害しようと言うのだ。己も被害をこうむるならば投げ捨てる事も考えている。少し後ろを走っていた絵梨菜は風を避けるように少し離れる。
「支給品で特定の人は煙幕をくれるのね？　使うタイミングは大事だわ」
　にぼしを落としていないか確認した燐は跳ね飛ばされ、気絶した人を避けながら確実に走っていく。妨害を物ともせず赤い髪を揺らして進む彼女は無意識に運を味方につけていた。彼女が走る場所は、うまく煙も火の粉も流れてこないのだ。
（ここを走り抜けて、煙も火の粉からもおさらばしたい）
（うーん、位置がわるかったかなー）
　夏夜と武道がため息をつく。その傍らには煙や火の粉を結界でどうにか凌ぐ陽太の姿が。
少し前には有紀の姿も見える。
「思っていたよりもハードだな」
　そう孝文が呟き、ダッシュを仕掛ける。越されてなるものか、と夏夜たちも走り出すのだった。
　その只中、歓声が上がる。ツインテールにチア服姿の絵梨菜は、雲の国の男性陣のハートを鷲掴みしたらしい。亮がその歓声に驚き、絵梨菜は歓声を心から喜んで笑顔に。
「わあっ、応援ありがとー☆」
　彼女は両手を振って答えると、デモストレーションとして近くにいた相手へ『超音速美脚乱舞』を「犠牲になってね♪」と見舞う。流石にそれは勘弁願いたい、と亮は重力操作して体を軽くして避けた。変わりに犠牲になったのは近くにいた白虎族らしい若者の模様。
（ふぅ、間一髪だったな）
　額の汗をぬぐう亮。だが、傍らに来た仮面の男が放つ一撃に気づく。亮は硬球を投げて避け、更に走っていくのだった。
　同じように陽太が歓声を浴びていた。派手に応援された陽太はちょっと照れてしまうも、にっこりと答える。
「ハーイ、がんばりまーすっ！」
　水を操る力でふわり、と水芸を披露。その煌く水が煙を少し緩和する。そんな副効果を齎しながら、陽太もまたトップ集団へ向かって走っていくのだった。

　＊　＊　＊　＊

　はらはらドキドキしながら、空翔船の上で観戦している面々。まぁ、賭けをするしないとか話が出て修が胴元をいつの間にかやっていたりするのだがそれはさておき。
　いつのまにか来ていたライメイと共に観戦していると、ふと、仮面の若者を見たライメイが甘酒をふきそうになっていた。
「どうしたですか？」
「いや、白鋼みつけたから」
　その一言に刀が窓に身を乗り出し、思わず叫んだ。
「って本当白鋼なにやってんだよ？！　王様だろ！」
「最近公務など忙しく、体がなまりそうだって言っていてな。それだろ」
　刀の突っ込みに、俺も若かったらやっていたね、とライメイがからから笑う。修は修でオペラグラスを使い、もう少し下の様子を伺っていた。
「なかなか白熱しているな。寝子島の面々は誰も脱落していないみたいで上々だ」
「皆さん、がんばって下さいっ！」
　修がミルクティー片手に頷き、メイが手を握り締めて祈る。

　そうしている間にも、レースはいよいよラストスパートへと向かっていく。
　