体力をつけよう　～初冬編～｜リアクション

体力をつけよう　～初冬編～

　準備体操を程よく終えたところでまずはゆっくり泳ぐ事に。プールに入る前、何気なく美咲紀が修を見る。
「ん？」
「シュー君、春先より逞しくなってきた感じですねー」
　そう呟きつつ腕にちょっと触れる。修は「そうか？」と首を傾げるも、逞しくなってきた、という言葉はちょっと嬉しかったりする。
　最初はゆっくり泳いで見る事に。月は修や美咲紀に速度を合わせていたが、ややあって修が言う。
「気を使わず自分本来の速度で泳いで良いんだよ常闇？　目標があったほうが、頑張れるし」
「そうですか？」
　月は僅かに考えて速度を少し上げ、綺麗に進む。美咲紀はその姿を見つつもがんばってクロールをしていた。平泳ぎでゆっくり進むのも好きだが、今回は肩関節の為にあえてクロールである。
　泳ぐのは気持ちいいなぁ、と思いながら進む修だったが、ふと、先に進む月の姿をみてふと、こんな事を思った。
（筋肉といえば常闇の腹筋は割れてるのだろうか？　ちょっと気になる）
　何を考えているんだろう、と思いつつも気になってしまう修。先に到着していた月は視線を感じつつも首を傾げるのであった。
　その後もタイムを計ったり、月が２人にアドバイスをしたり、と実に充実した時間を過ごす。
　バタフライにも挑戦する修は、「もう少し首筋が欲しい」と自覚し、月はそんな彼の姿をなにか思ったのか静かに見続け、美咲紀は新聞部の取材もかねて写真を取ったりしていた。
「シュー君、遠泳のコツも習っておけば万が一の時にも安心かもですよ！　ほら、沖でクルーザーがひっくり返った時とか！」
　美咲紀の言葉に、思わず笑う修。その笑顔をみつつ、美咲紀は何となく胸が痛くなるのは、……何故だろうか、と自分に問うのだった。

　試合で火照った体をクールダウンさせようと、亨と咲もプールに来ていた。
「破廉恥な水着など期待しないようにっ」
　と風紀委員モードできっぱり言う咲に、
「貴女と一緒だといい感じに身体に火が入る。火照り余るくらいにね」
　プールで流して冷まそう、と笑う亨。にっこり笑うと咲は少し顔を赤くする。
「何を口のうまい事を……」
　そう言いながら恥らう姿は本当に可愛いな、と亨は表情が緩むのをどうにか抑える。
　念のために軽く準備運動をして、ゆっくり水の中へ。火照った体に程よい温度の水はとても心地よく、２人ともリラックスしていく。
　最初はゆっくり泳ごうと、２人でのんびり水の中を進む。
（（この人の傍は、居心地がいい））
　と互いに思っていると、ややあって亨がそっと口を開く。
「ここも程ほどに動きながらクールダウンできる所が良いですね」
「ああ」
「そうだっ」
「？」
　咲が穏やかに相槌を打つと、何を思ったのか亨はそっと咲を抱えた。所謂『お姫様抱っこ』である。ちょうどプールの端っこだったので邪魔にもなっていないし、傍目から見ればカップルがじゃれあっているように見え、微笑ましい。
（ちょっ、亨君？！）
　突然の事に咲の頬は赤くなる。その様子がまた愛らしくて、亨はにっこりとなる。
「これでもっとゆっくりできるでしょう？」
　それに冷えすぎずに済むから、と付け加えて咲をみれば、恥ずかしそうに身じろぎする。でも、寛いでいる様子から悪くは無いようだ。
「いや、嬉しくないわけじゃないけど……これは恥ずかしい……かな」
　咲がうつむき加減にそう言えば、亨がそっと頬を寄せる。くすぐったそうに咲が笑い、２人はしばし笑いあうのだった。