体力をつけよう　～初冬編～｜リアクション

体力をつけよう　～初冬編～

「それ、全部食べられるの？」
　夏朝の言葉に海がうんうん、と頷いて問いかけるも、真央はえへん、と胸を張る。
「もっちろんなのだ。しっかり食べて休んだら、今度はプールでしっかり泳ぐのだ！」
　と気合の入った笑顔を見せる真央だったのだが、この後例の如く褌とさらしで泳ごうとしたために止められ「これは日本古来の正当な水着なのだどうしてなのだ～」と涙を流す羽目になるのだが、彼女はまだ知らない。
「温水プールと聞いて真央ちゃん閃いたのだ。オールシーズンフンドシカムバックなのだ～！」
　と興奮気味になる真央をどうにか諌める夏朝。そんな様子に刀と海は苦笑するしかなかった。

　別の席では八神修と椿美咲紀、常闇月の３人組もカフェテリアに来ていた。修はホットコーヒー、月はアイスコーヒー、美咲紀はオレンジジュースである。
「ん～、美味しいですっ」
　いい笑顔で美咲紀が言えば、２人は思わず笑顔になる。月は「そうですねぇ」と相槌をうちつつゆっくりと２人を見る。
「隣で泳いでいましたが、大分体力がついてきたのではないでしょうか？」
　以前の八神さん達を知らないのでどこまで向上したのか、まではわかりませんが……、と言うと修と美咲紀は少し嬉しそうに微笑む。修は相変わらず朝のランニングと筋力トレーニングを続けているので、その効果が出ている事を実感していた。
「春から続けてるから、大分疲れ難くなったかもしれないな。『継続は力なり』とも言うし」
　謙遜しつつも感謝を覚え、修はゆったりとした気持ちになっている。その隣で美咲紀はうとうとし始めていた。
「常闇さんにそういわれると……嬉しい……」（うとうと）
「み、美咲紀、ここで寝るな」
　苦笑して揺らす修の様子に、月は少しだけ優しい眼差しになっていた。

　寧々子がカフェテリアへ行った頃も、まだ人がたくさん利用していた。席が見つかりそうも無いな、と思っていると……、傍らに繊細な印象の女性がいた。思わず目が合ってしまう二人。
「……まだ、混んでいるみたいですね」
「そうだねぇ。でも、このサンドイッチ食べたいなぁ」
　寧々子が呟けば、女性も同じ気分なのか「そうですね」と頷く。それとなく話していると、彼女は深倉理紗子という若いお医者さんだと知った。
　寧々子と理紗子がホールスタッフに話をすると、やはり相席になるとの事だった。そこで案内されたのは、どこかアンニュイな雰囲気のある少女……壬生由貴奈がいる席であった。
「ん？　あぁ、相席だったね。よろしく」
　彼女は軽くそう挨拶し、２人も頷く。そうしつつも、妙におちついた雰囲気と喧騒のお陰か、３人は少しずつ会話を楽しんでいく。互いの事情をそれとなく語れば、なんかほっこりとしていた。
（たまにはこういうのもいいかもしれない）
　理紗子がミルクティーを飲みながら小さく頷くと、目の前にクッキーが差し出された。
「よかったら、どうぞ」
「え？　いいの？　ありがと！」
　寧々子は嬉しそうに１つとり、理紗子も感謝の気持ちを込めて手にする。一口かじると、何故だろう、どこか懐かしい味がした。

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