体力をつけよう　～初冬編～｜リアクション

体力をつけよう　～初冬編～

　――夕方。

　天動記士郎はチラシを手にスポーツセンターへとやって来た。
（無料、ですか……）
　せっかくなので商品の配達の帰りに立ち寄った彼は、普段から体力維持のために朝のランニングや筋トレは行っている。
「たまにはマシーンを使ってやってみるのもいいですねぇ」
　軽自動車を駐車場に止め、彼はのんびりとスポーツセンターへと足を踏み入れた。
　トレーニングウェアに着替え、軽くランニングやストレッチをすると早速トレーナーの所へ行き、説明を受ける。偶然にもよくお店へ来てくれるお客さんだったので思わず話が脱線してしまいそうになったがそれはご愛嬌か。
　嘗ては記士郎もマシーンを使って体を鍛えていた時期があった。が、現在は寝子島でのんびり雑貨屋の店主としての生活を楽しんでいる。けれども時折不思議な事件に巻き込まれたりする事もある。それを思うと、鍛えておいたほうがいいのかもしれない、と彼は考えていた。
（いざ、という時の為に動きが鈍らないようにしておく必要があるかかもですね……）
　幾つかの出来事を思い出しながら、高い負荷をかけゆっくりとダンベルプレスを行う記士郎だった。
　普段の柔和な印象とは違い、厳しい表情で黙々とトレーニングをする記士郎の姿をみた知人たちは、どんな思いを抱くだろうか？
（鈍った様子は、あまりなさそうですかね）
　そう思いながら、記士郎はゆっくりトレーニングを続ける。彼はその後チェストプレスなども行い、汗だくに。休憩がてら貰ったスポーツドリンクを飲み、一息つく姿は不慣れな運動で口もきけないほどバテている人に見えたかもしれない。
（……明日は筋肉痛で起きられないかもしれないですね。一応、柔軟して帰りますか）
　そんな事をのんびり思う記士郎なのであった。

　色々な人とおしゃべりした寧々子は意外と時間が経っている事に気付いた。そろそろ今宵の宿へと足を運ぼうか、と考えていると……、１人の男性がイスに座ってお茶を飲んでいた。トレーニングの帰りだろうか、それとも水泳の後か。濡れた髪をタオルで拭きつつ、暮れた空を見ているようだった。
　自分も気が向いたら今度なにかしてみよう、なんて思いつつ出口へ向かうも、何気なく見つけた資料に興味を持った。

（とりあえず、筋肉痛対策でもしておきますか……）
　なんて思いつつ記士郎が顔を上げると、資料がおいてあるのが目に入った。取ろうと思い歩み寄ると、偶然寧々子と出くわした。
「失礼」
「あ、いえ、先にどうぞ」
　記士郎と寧々子は暫く譲り合ったが、結局寧々子が先にとる。何気なく２人はその資料を一緒に見る事に。それとなく自己紹介から始まり、今日のことを互いに話せば１日が楽しかったんだな、と何となく自覚する。
「まぁ、たまには運動もいいものですよね」
　と記士郎が笑えば、寧々子も「今度は何かやってみようかな」と少し考えるのだった。

　北玄が事務所に諸々の報告を終えると、会社から電話があった。その内容は取引先の会社からの感謝の言葉と、新たな提案だった。どうやら今日と同じような事を別の場所でもやって欲しい、との事らしい。
「はい、北ですよ！　……本当ですか？！　判りました、来週は鎌倉のスポーツセンターですか？　はい、大丈夫ですよ！」
　玄は手ごたえを感じつつ口元を綻ばせる。彼は明日も頑張ろう、いう気持ちになって思いっきり伸びをしたのだった。

　――こうして、無料開放日は過ぎていく。

（終）

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あとがき

担当マスター：菊華伴
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菊華です。
今回は体力づくりということでスポーツセンターを舞台にやってみました！

懐かしいですね。スポーツセンター。
私も学生時代は時折、スポーツセンターにあるプールへ泳ぎに行っていましたね。
スポーツは下手ですが、体を動かす事自体は好きなんですよね……。

それはさておき。皆さんののびのびとした様子を描けたのならば嬉しい事です。
今後も時折スポーツセンターを舞台としたシナリオを提供できればと思っています。

それでは縁がありましたらまたよろしくお願いします。

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