戦え！　亡霊戦隊ユウレイジャー！｜リアクション

戦え！　亡霊戦隊ユウレイジャー！

「やっぱここって雰囲気最高ね」
　観光気分の桃川圭花は猫鳴館をパシャパシャと撮り続けている。
「……て、なんで堂々と写り込んでんのよ！」
　撮影した数枚を見返してみると、全てに噂の赤ユウレイジャーが。窓際にひっそりと佇む「ザ心霊写真」風のもあれば、隅っこでギリギリ入り込んでダブルピースの「やんちゃ修学旅行生」風、たまたま写り込んでしまった「通行人」風、さらには画面全体に赤ユウレイジャーの顔など。
「いい記念になるわ」
　カメラ越しでないと位置を確認できないが、「もっと、もっといいのちょうだい！」と見えない赤ユウレイジャーに声をかける。
「リーダーレッドの撮影会はここか」
　赤探しをしていた八神修も参加する。
「カッコいいと噂の赤い影。ぜひこちらにもいいポーズをくださいな」
　新聞に掲載しても良いかな、と目立ち心もくすぐりつつ、話術巧みにノせていく。メディアの手腕の見せ所だ。
「さすが戦隊の中心に立つ方は魅力の見せ方が上手だ」
　いつの間にかファインダー越しでなくとも赤の姿が浮き彫りになる。ポーズのバリエーションも激しくなってきた。
「すごい、どんどんエスカレートしてる。動画もいけるかしら」
　動画モードに切り替える圭花。

「赤い天使さんばっかりズルい！」
　そこに割り込んできたのは橘明里。対抗心をメラメラと燃やして登場だ。
「赤い天使とあかり天使、一緒に写りたいなの！」
　赤と押し合いへし合い、真ん中取り合戦を繰り広げだす。
「面白いことになってきたわ」
　カメラを向けながらおかしくて仕方が無い圭花。
「ライバルの登場だ、どうする赤ユウレイジャー？」
　修、さらにノせていく。
「ファッションで勝負なの！」
　どこから取り出したのか、天使セットの一つ蛍光灯リングを赤ユウレイジャーの頭に乗っける。触れられるのかな、乗っかるのかな。とハラハラしながらアプローチの明里。
「かんちがいしないでよね！　あかりもあなたも天使だから貸すんだからね！」
　さらに大きなリボンをつけてあげたりとフリーダムすぎる装飾を施す。
「すごい目立ってるわ2人とも……さらにもう一工夫ないかしら」
　ハードルをさらに上げていく圭花。

　すると、ゴゴゴゴという地鳴りの後、地面がボコボコと盛り上がり、地中の根っこが飛び出してきて明里の体を巻き込み押し上げた。
「わあ、なの！」
「幽霊ならではのイリュージョンだな」
（ちょっと激しすぎかしら……）
「すごいなの！　もっとすごいのが見たいなの！」
　圭花の心配をよそに、根っこの上から明里が言うと、得意気な赤はさらに念を込める。
「……？」
　今度は猫鳴館全体が震えだす。と、その直後。

　パァーン

　館の一面、全ての窓が一斉に割れ、キラキラと宝石のような雨が彼らの頭上に降りそそいだ。
「……すごいの撮れちゃった」
　圭花はしばし放心。
「赤い天使さん、綺麗なの！」
　明里は興奮気味。
「猫鳴館の連中……今年の冬は越せないかもしれないな」
　遠い目をして冷静な修。
　褒められた赤ユウレイジャーはだいぶ満足のご様子。

　どこかから自治会長の悲鳴が聞こえたような気がしたが、気のせいということにしよう。