戦え！　亡霊戦隊ユウレイジャー！｜リアクション

戦え！　亡霊戦隊ユウレイジャー！

　あかずの間の前ではカレー組が黄色ユウレイジャーを交えてカレー食べ会を繰り広げている。
「どうだ、うめぇだろ？」
　本宮虎治が声をかけると、カレーを飲み物のように搔き込みながら黄色ユウレイジャーは何度もうなずく。
「こちらのインド料理もいかがでしょう。汁物で、カレーに近い味わいですよ」
　森蓮の勧めでサンバールとラッサムも食す。こちらもお気に入りのようだ。
「もともとインドにカレーという料理はないそうです」
　と、蓮の切り出したカレートークに黄色ユウレイジャーはいささか喉を詰まらせた様子だ。
「驚きましたか。インドを植民地支配していた大英帝国が、香辛料をたくさん使うインド料理をカレーとして紹介したようです。食事を意味するタミル語のカリが、カレーの語源として有力なんだとか」
「へぇ、じゃあカレー粉もか？」
　虎治もカレーを食べながら会話に入る。
「そうみたいです。イギリス人がカレーを作りやすくするために発明したのだとか」
　そんなカレー談義をしているところへ鷲見貫司が大量の缶詰めを持ってやって来た。
「ほらよ黄色さん、カレーを缶詰めにしてやったから、いつでも好きなときに食べられるぜ。缶切りも付けとくよ」
　自身のろっこん「缶詰のすゝめ」で保存食を量産したのだった。
「レトルトもあるし、こんだけありゃ飢えることはないだろ？」
　喜ぶ黄色ユウレイジャーを尻目に、貫司は自治会長の元へ。
「現会長さんはとんだとばっちりを食っちまったようだな」
　書類に目を走らせながら邪衣士、ため息を一つ。
「ほんとですよ……さっきもどっかでガラスが割れた音したし、また始末書が増える……」
「ははは、いつの時代も自治会長の負担は変わらんな」
　高笑いする貫司の横を抜け、虚金俊通が士にカレー皿を渡す。
「会長、これ食べて元気になってくれ」
「菜園で採れた香草や栄養価の高い材料を使っているので、みなぎりますよ」
　俊通と蓮の気遣いに感謝しつつ皿を受け取る。
「これで黄色はオーケーとして、そろそろ緑も見つかってる頃かな。やっかいなのは青とピンクだと思うが」
　懐かしい景色を散策しながらユウレイジャー探しでも行ってこようかと思案する貫司。
　その傍らで俊通、一人冷静になる。
（あかずの間とかいうよく分からん入り口の前で、黄色い幽霊と一緒にカレーを食べる……）
　しかも彼ら幽霊を満足させられなかったら寮がなくなってしまうとは。
（なんて不条理だ）
　ツッコミたいが、雰囲気的に何となく言い出せないのだった。

　そんな団らんとしたカレー組に気づかれぬよう、こっそりあかずの間に侵入する者がいた。
　カオスを創出する骨削瓢だ。
　あかずの間は暗く、扉外から入る光は室内のほんの数歩先までしか照らさない。
（こんなオンボロ寮にこんな空間があったとはねぇ）
　寮の間取りからしていまいち納得できないが、そんな納得のいかないことばかり起きるのが猫鳴館だ。
（こんなのは楽しんだもの勝ち）
　ひっそり笑むと、持って来た燻煙式の殺虫剤を置き煙を射出させていく。
（全く計り知れない広さだね）
　闇はどこまでも続いているようだ。風はないが、どこからともなくうねり鳴くような音が聞こえる。幻聴だろうか。
（これはまずい、長くいると気がおかしくなりそうだ）
　さっさと仕掛けを施す。ライターにちょっとした細工をし扉の鍵へ繋げる。ユウレイジャーが無事に収まりきって会長が鍵をかけた瞬間、火がついて火気厳禁な煙に引火するという仕掛けだ。
（施錠と同時に轟音！　あかずの間消失！　愉快じゃあないか）
　笑い声を殺しながらあかずの間を出る。
（あかずの間のあの広さは想定外だったねえ。さて、どこまでうまくいくやら）
　どうなろうと知ったこっちゃない、面白ければいい。せっかくなのでユウレイジャーを拝んでおこうと散策へ出かける。