Search for lost books｜リアクション

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６．日常のディヴェルティメント

　ミステリ小説を数冊、本棚から取り出してテーブルに置いてから読み始めるのは金髪碧眼の女子生徒。ウェーブがかったロングヘアが美しいブリジット・アーチャー、寝子島高校ミステリ研究会の設立者である。
　「やはり、古典的な『読者への挑戦』が入る作品も宜しいですけど、倒叙式も捨てがたいわね。知名度の低い旧作にも掘り出し物はないかしら」
　と、彼女が一人で小説の評価をしているといつの間にやら横にちょこんと少女が座っていることに気付く。ブリジットが読んでいた小説を横から覗き込んでいた。
　その少女は２冊のスケッチブックをテーブルの上に置いていた。
　「あら、海」
　ブリジットはその少女の名前を呼ぶ。
　『すいりしょうせつはよんでてドキドキする』
　海と呼ばれた少女は素早くスケッチブックに言葉を書いてブリジットに見せる。
　筆談をするその子は小山内海、芸術科所属である。
　「ふむふむ、ミステリに興味があるなら、寝子島高校ミステリ研究会はいつでも歓迎するわよ？」
　ブリジットは海の言葉を受けてそう答える。
　海は彼女の発言を受けて、スケッチブックを１枚めくり、文字で返信する。
　『さきのてんかいとかいろいろかんがえながらよむのがおもしろいよね』
　さらにもう１枚ページをめくる。
　『きょうはかいがかんけいのほんをさがしにきたんだよ』
　と、ブリジットに説明をする。
　「そういえば芸術科だったわね。まぁ、気が向いたらお茶でも飲みに来るといいわ」
　『うん』
　そんな他愛もない会話が緩やかに繰り広げられる。

　暫くして。
　「よう、同席いいか」
　と、２人に声をかけるのは御剣刀。片手には本を持っている。
　「あら。構わないわよ」
　ブリジットは何かを推測するように刀のボサボサ髪と本を交互に見る。
　『めずらしいね』
　海は刀にスケッチブックを向ける。
　「本を返し忘れていたんだ、そのままだと張り出されてしまうし。あとちょっと調べ物」
　そう言って刀は２人の対面に座る。
　「そういえば、返却キャンペーンとかやっていたわね……」
　探偵小説の探偵のように、ポーズを決めて考え込むブリジット。
　「ああ、図書室前の掲示板に未返却者の名前と借りた本の題名が張り出さられるからな」
　と、刀は肩を竦める。
　『ちゃんときげんはまもらないと、めっ、なの』
　そんな刀の言葉に反応して、海は頬を膨らましてスケッチブックで説教の意を示す。
　「……はい、スイマセン」
　素直に謝る刀。小動物のような海に叱られる男子としての姿はどことなく哀愁漂う。

　パチン。

　と、指を鳴らすのはブリジット。

　図書室内は人が多いせいか、ろっこんは発動しない。しかし、気にせず彼女は刀を指差してから言葉を紡ぐ。
　「なるほど。謎は全て解けたわ。刀、あなたは、本の題名と名前が張り出されると知り、慌てて本を返却にきた。それはなぜか？　借りていた本は他人に知られたくない内容だったからよ。それは何か？　そう、男子生徒が露見して困る書籍。つまり、その手に持っているのはＨな本！」
　と、ブリジットは言い切る。