猫鳴館、笑うべからず黒猫の狂嵐｜リアクション

猫鳴館、笑うべからず黒猫の狂嵐

● エピローグ

　その日の夜、異臭の残り香の中、燻煙剤と爆発で煤けた廊下の掃除を終え、吹っ飛んだ邪神の部屋の屋根にも応急処置が施されて、ピカピカにはならななかったが、そこそこいつもと同じに戻った猫鳴館の大部屋にて。

「結局、黒猫サンの正体は暴けなかったのだ～」
　何度もトイレに行ってげっそりとした真央がへばっていた。
「ひとりは瓢ちゃんのような気もするけど、もうひとりは誰だったのだやっぱり館精霊さんだったのだ？」
「さあな」
　海原茂は茶をすすりながら知らん顔だ。彼の隣にはワカメ頭の鷹取洋二がいて、
「また猫鳴館の謎がひとつ増えたということだね」
　などと口にしている。この二人、意外と仲が良いのだ。
　今回の掃除の主な成果は、床下収納を整理できたことと、邪神の部屋を浄化（？）できたことと、錆びた刃物が軒並みピカピカになったことだろうか。
「サキリ君が包丁を研いでくれたおかげで、また料理し放題だな」
　と茂は満足そうだ。
　エロ本はお焚き上げにあったが、きっとまた出てくるだろう。
　おちこぼれ姫の新刊はそっと茂の引っ越し荷物の中に入ったのだが……見逃してやってほしい。

　そこに、段ボール箱を抱えた解理が顔を出した。
「これを処分し損ねてしまったよ」
　中に入っているのは３０年前の取り壊し反対運動当時の学生が作ったとみられるビラ、演説の原稿、写真、ヘルメットや段幕等の道具であった。いずれも大変な力作で、「学生運動かよ！」と思わず突っ込みたくなるほどの出来栄えである。
「いつか使うかもしれないよい？」
　瓢が、にやにやしながら口にする。
「そんな機会が来ないことを祈るよ」
　言いながら解理は段ボール箱に封をした。

　――真夜中。

　目が覚めて水を飲みに来た鷹取洋二は、一匹のナメクジが台所の床を這っているのを見つけた。
　掃除中に綾花の首筋に張り付いて、永遠に払われたあのナメクジである。
　洋二はひとりぼっちのナメクジを憐れに思って、そっと摘み上げて自室に連れ帰った。
　このナメクジが、梅雨の頃、瓢たちが地下帝国からうっかり逃がしてしまった巨大ナメクジのなれの果てであることを知る者は、まだいない。

＜了……？＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございます。笈地です。
今回は素敵なイラストを元にシナリオを展開してみました。
真央さんはじめ御縁のあったみなさん、ありがとうございました。
猫鳴館は私にとってもホームと言いますか、のびのび書ける楽しい舞台です。
（ドカーンとかエロ本お焚き上げとかできるのは猫鳴館だけ！？）

さて。さすが猫鳴館、みなさんのおかげで次のようなものが発掘されましたよ！

　・おちこぼれ姫の新刊『おちこぼれ姫入浴へ行く』＞海原茂取得
　・床から生えてるカラフルなきのこ
　・何十年物の忘れ去られたぬか床（ずっと混ぜられた痕跡ナシ）
　・ひげめがね　＞伊賀解理さん取得
　・少なくとも40年以上は昔の未開封のレトルトカレー『ニャンカレー』（大量）
　・古いパソコンとエロゲー＆クソゲーの山
　　『超熟女（現代編）（宇宙編）（転生編）』ほか（意外にオークションでプレミア価格）
　・とてもおどろおどろしい祭壇と邪神の御神体っぽいナニカ　＞成仏
　・３０年前の取り壊し反対運動当時の遺品
　　（ビラ、演説の原稿、写真、ヘルメットや段幕等の道具）
　・ナメクジ
　・シュール……っぽいサンマ缶（賞味期限２０年前）＞開封後爆発
　・謎のＢＬ彫像（絡みあう男性半裸像・題『愛と薔薇』）＞後木真央さん取得

これらのブツは、あちこちにちりばめての登場と相成りました。
そしてそして……あれれ、暗雲の予感？　もうひと波乱ありそうな猫鳴館です。

それではまたの機会がございましたら！
期末試験を受けられる方はそちらでお会いしましょう。笈地でした。

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