祈りの家を隠すように、又は縛るように
白を纏った野薔薇が生い繁る。
入り口付近の外壁には薄汚れた小さなプレートが嵌め込まれており
「九夜山勿忘草教会」という文字が刻まれているのが確認出来る。
この教会の正式名称らしい。
(或る暖かな春の夜。
何時しか人々に忘れ去られたその教会は
月光を浴び、美しく咲き誇る野薔薇と共に
今日も変わらずそこにあった。
夜の静寂に包まれるその場所に草木をかき分ける音が響き)
ここなんだけど…。
どう、白露さん。綺麗でしょう?
(夢か現かと惑う様な現実離れした光景。
それを少女は「綺麗」と評し
手を繋ぎ、共にそこへと訪れた人物に
好意を隠すことなく微笑みかける)