酷く荒れ果てた礼拝堂。
争いの跡が色濃く残されており
床には割れたステンドグラスの破片が散乱している。
教壇の下には隠し扉があり
そこから地下室へと降りられる様だ。
中央にぽつりと佇む薄汚れた天使像は
どこか泣いている様にも見える…。
…私を忘れないで。
(天使像を見つめ小さく呟く。
「私を忘れないで」
それは勿忘草の花言葉。
「九夜山勿忘草教会」
人々は何を想い、その名をこの地に与えたのか。
誰に「忘れないで」と願ったのか。)
…それとも真実の愛?
(「真実の愛」
それもまた勿忘草の持つ花言葉の1つ。
人々はそれを願ったのだろうか。
「真実の愛」がこの地に宿るようにと。)
…あなたは知ってる?
(内緒話をするように、静かに問いかける。
天使像は何も答えない。
変わらぬ微笑みをそのかんばせに浮かべ
ただ言葉を受け止めるのみ。)