＜鈴島海賊の秘宝IV＞伝説の島リ・ウグウ｜リアクション

＜鈴島海賊の秘宝IV＞伝説の島リ・ウグウ

　インディゴブルーの海の底。
　探し求めていた＜宝の島＞は、龍宮によく似た名前を持つ島だった。
「リ＝ウグウかぁ、浦島太郎もここにきたことがあるのかな」
「いやあ、タイやヒラメの舞い踊りってぐらいだから美人が持て成してくれもんかと思えば、なんか皆、顔色悪くないか？　どっちかってーと深海系の顔色だぜ。『ウグウ』ってのも、なんかやり込められたみたいだし」
「しっ。失礼だよ」
　北原みゆきと握利平のやりとりを左の耳朶で聞きながら、桜庭円は抱いた印象を口に出来ずにいる。
　この島はまるで深海の中で丸くなって膝を抱える胎児のよう。
　安らぎはあっても喜びはない。
　寂しくて、孤独で、膝を抱えたまま夢を見るのも倦んでいる。
　そんな印象。

　　月を落とせ　星を落とせ　鯨を殺せ
　　　　　　　輝く海と空の間に
　　　　　　　　　さすれば時止まり我帰る

　宴が開かれている。
　青白く首筋の美しい女たちが、言葉少なにご馳走や飲みものを運んでくる。
　願いを叶えて欲しいと嘆願する王、ジュニアスの歌声は低く、心地がよい。
　その揺らぎに身をゆだね、深いところに沈みそうになって。

（怖い）
　円は胸に浮かんだその感触の、本当の意味を掴もうとするかのように、胸元を掻き抱く。
　時が止まる。
　怖い表現に思える。
　手を伸ばすけれど曖昧で掴めない。波の中にある翳（かげ）を掴もうとするかのよう。
　円はその翳に問いかける。
（一体何が起きる？　本当に歌の通りにしてもいいの？）

　白いシーノの船が、リ＝ウグウの空を割って現れたのはその直後の事だった。

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