寝子島下水道防衛戦線｜リアクション

寝子島下水道防衛戦線

●●●前哨戦はアツアツで●●●
「フフフフフ、どうしたの、かナァ？」

　接触したまではよかった。
　いや、もしかしたら不幸だったのかもしれない。
　今度は徹底的にお仕置きしてやる！と、意気込んだが目の前の戦力差は激しい。

　ネズミ5匹にピエロ。
　1対6というのは圧倒的な不利ではある。
　その場に縫いつけられたように動けなくなってしまっている。

「積年の恨み？　罪のない人を見せ物にして弄んだ奴がそんなモンのために
　この島の人間巻き込む気か！」

　気持ちは負けていない。むしろ勝っている。
　だが、今彼－風雲児轟扮する『ザ・ストレイト／バーストトランス』－だけでは、
　太刀打ちできないことも理解していた。
　だからこそ声を上げる。
　仲間の到着を信じて。

「そんなモン？　ああぁ、そうだネ！　そんなモンのために僕はきたんだヨ！」

　不愉快に笑うピエロはそれは楽しそうに語る。
　ザ・ストレイトは歯ぎしりをする。

　数ヶ月前、ザ・ストレイトを含めた数人がコロシアムに召還されたことがあった。
　そのときに『奴隷』であり『平和ボケした日本人』と呼ばれたのである。
　結果的に奴隷側の勝利だったが、主催者側のピエロは強制退場させられていた。

「そんな事、俺が絶対許さねえ！」
「イイネッ！　その顔！　揺れ動く感情ッ！」

　吠えるザ・ストレイトに笑うピエロ。
　一頻り笑った後、笑いながらも冷徹な目を向けるピエロ。

「なら競争だネ！　君が僕に勝つのが早いか、地上に出て暴れ回るのが早いかネ！」
「いいだろう、受けてやる！」
「フフフフ、君だけなら、ネズ君一匹で事足りるヨ！」

　ピエロに乗せらている事は理解していたが、これ以上引き延ばす事は難しいだろう。
　それに、不幸中の幸いとも言おうか、一体だけならば何とか持ちこたえられそうだ。
　もちろん、すべてを倒すことも考えた上で、だが。

　ピエロは手を叩き、ショータイムと言う名の戦闘開始を告げる。
　一匹のネズミはザ・ストレイトへ、他は交代でマンホールへの道を食べていく。

　ザ・ストレイトは目の前のネズミに集中する。
　先に行動したのはネズミだった。
　噛みつきをするために速い速度でザ・ストレイトに迫る。
　ただ速いだけなら今のザ・ストレイトには避けるのはある程度たやすい。

　彼のろっこん【戦衣着装】は進化し、身体能力の強化が付与されている。
　『ザ・ストレイト／バーストトランス』と呼ぶ姿に変身することが可能となった。

　回避した横から人間で言うところの顎下をねらって攻撃する。
　うまく当たったようで、ネズミは噛みつき後から少し止まっている。

「アハッ、強くなってるネ！　次が楽しみだヨ！」
「二度と行くか！　行かせるか！　そして…」

　ピエロの甲高い声はよく地下道に響く。
　ピエロを見ずに答えるザ・ストレイト。
　揺れながらも向かってくるネズミはタックルを仕掛けてくる。

「二度と来させるか！」

　揺らいでいても速度と威力が乗ったタックルを受けるのは容易ではない。
　が、ザ・ストレイトは正面から受け止め、肩をネズミに当てる事で力を分散させる。
　結果、ネズミは体を宙に浮かせ、遠心力を使ったように後ろに投げ飛ばされる。

「お前はこの寝子島には不要だ！」
「ビューティフォー！　その意気だよヒーロー！　サァ、お代わりだヨ！」

　両手を叩き、ネズミが二体ザ・ストレイトに向かう。
　連絡がきていることは分かっていたが、戦闘中であるために見られていない。
　ヘッドライトがネズミの目を焼くのは、偶然が重ならなければ難しいだろう。

　先ほどの攻防をシミュレートするザ・ストレイト。
　大丈夫だと、自分の体に言い聞かせて構える。
　回避からの攻撃、追っての攻撃を回避し、ピエロに背を向ける。
　その時。

「ブシは背に傷を受けないんだヨネ！」

　ピエロが指を鳴らす。
　そこから目にギリギリ見える衝撃波が飛んでくる。
　ザ・ストレイトの危険信号に触れ、ガードしようとするが、間に合わない。
　背に傷を負うザ・ストレイト、その後ろのネズミ達も悲鳴のような声を上げる。

「てめぇ…！」
「アッハハ！」

　片膝をつきながら、ピエロとネズミの間に居る形になってしまったザ・ストレイト。
　忘れてはいないが、地上への道もかなり削られている。

　心臓が脈打つ。
　こう言うとき、自分の『正義論』ではどうするか。
　ザ・ストレイト…風雲児轟は一つの決意を決めようとした。

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寝子島下水道防衛戦線

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