聞こえずとも分かります。ガラスの向こうを見れば、ちゃんと。ドームを包み込むように、そこには称賛の拍手が満ちていることが。
「……あのさ、鳴」
「うん……何?」
相棒。ふたりでひとつ、『狛猫』です。
それなのに、笑顔を浮かべながら、手を振りながらにつぶやいた市子の思いが、鳴にはまだ見えません。
「…………や。何でもねーし」
「そっか。うん」
にこやかに両手を振る圭花も、ましてや市子本人も、きっと尋ねても話してはくれないでしょう。もちろん決して、鳴を爪弾きにしているわけではないはずです。それは多分に、恐らくは市子の性格によるものであるように思えます。付き合いも長く、粗野に見えて繊細な彼女のことを、鳴もいくらか分かっているつもりです。
(そのうち……話して、くれるよね?)
不安は胸にしまい込み。今は、ただこの瞬間を。
ひと時、抗えないほどに心地良い余韻を、存分に。
「楽しんでもらえたかしら? うんうん、そうよね! それじゃ今日はここまで、Thank you for listening,『Love&peach』was navigated by DJ.Momo! See you again……bye-bye!」
三人で。