せんせいといっしょ：瓜山先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：瓜山先生編

序：作品展までもう少し

　――シーサイドタウン・某所

　この日、瓜山メイは若手書道家の作品を集めた作品展が、とあるイベントスペースで行われた。その数々の書の中には寝子高の生徒やOB・OGが出品したものもある。
　作品の他にも花や水墨画などが飾られ、綺麗に整えられる。それを数名の寝子高生が手伝っていた。
　そのうちの１人である御巫時子は花をいけていた。メイの指示に従って作業をしているのだが、花を飾る人が足りずこっちの方にまわっている。
　彼女は作品の１つ１つにあわせ花を選び、それらをイメージするような花をいけていた。これにはメイも感心し、「勉強になりますね」と呟いていた。
（やはり、荷物を運ぶのはどれも大変ですね）
　メイと共に花を運びながらそう思っていると、御剣刀と森蓮が掛け軸や額に入れられた作品を飾っていた。
「先生、こっちの作品はどこにおきますか？」
「そうですね。これは最近受賞した方のですから見栄えがする出口付近にお願いします」
　刀の問いにメイが答えると、蓮と共に作品を運んでいく。かと思えば今度は別の人から作品の位置を問われ、先ほど時子がいけた花の傍に、と指示をする。
　普段のどこか自信が無い姿とは程遠く、和服できびきび行動するメイの姿はとても新鮮だった。
「お花はこれで全部、ですか？」
「ええ。では、私達も作品を運びましょう。掛け軸を少しずつなら大丈夫だと思います」
　時子とメイは余った花器などを片付けると、すぐさま掛け軸を取りに行った。

（これは、少し低めの位置にしたほうがいいでしょう）
　蓮は、猫鳴館で暮らしている。今回は、先日サンマを瓜山兄妹から貰ったお礼もかねて作品展の手伝いに来ていた。
（自動ドアは閉館まで終日開かれている、との事でしたね。手動のところは私が開けましょうか）
　作品などを運びつつ、案内などの事も考えていると、刀が掛け軸を手に考える。
「なぁ、コレってこの位置でどうだ？　見やすいか？」
「もう少し下に出来ますか？」
「おう」
　刀は蓮の頼みに頷き、かける場所を下げる。そして２人でバランスをみつつ頷いた。

　その途中、刀はとある作品に目をとめた。力強く書かれた『閃』という一文字に、刀は目を奪われていた。
「先生、これは……」
「これは、私にとって兄弟子に当たる方の作品ですね。居合いもされていて、それ故に、でしょう」
　そう穏やかにメイが答えれば、刀は他に気になった作品の意味などについても聞いてみる。彼の祖父も書道をしていたが、意味などが解らなかったからだろう。
（元旦とかに今年の抱負とかを書いていたけれど、あれはあれで気合を入れていたのかな）
　そう思い、メイに伝えると彼女はそうかもしれない、と頷く。
「筆で抱負を書くことで改めて覚悟し、前を向くという意味でもしていらっしゃったのかもしれません。あぁ、これは私の解釈なのですけれど……」
　とはにかみながら言うメイに、刀は「ありがとうございます」と少し照れつつ礼を述べるのだった。

　蓮は来場者から問われて困らぬよう、トイレの場所も確認していた。それだけではない。地震や火災などの『万が一』に備え、避難経路や非常口、非常階段もチェックしておく。
「熱心ですね、蓮さん」
「いえ、念には念を、といいますから」
　蓮はそう言いながら、避難はしごや救助袋の位置をチェックしており、メイが感心したように頷く。
「細かいところにも気を配るのですね……」
「地震の衝撃によって消火栓のホースが飛び出し、それが原因で火災報知機が作動し、階段に通じる防火扉が閉まってしまった、という事例もあるそうですので」
　避難経路などの案内などを作れるかと蓮が問えば、メイは時計を見、会場に貼るタイプなら、と許可をくれた。蓮は元々用意された順路マップに書き込む形で避難経路案内をつくり、会場に張っておく事にした。

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