雨の日、秋の日、フツウの日？｜リアクション

雨の日、秋の日、フツウの日？

　雨が降ると、余計に寒く感じる気がした。
　月守輝夜は授業中、時折窓の外を見ては「雨やまないかな？」と願っていた。
　残念ながら、予報通り一日ずっと雨のようだ。気温も今日はもう上がらないらしい。
　――雨って、ちょっとゆううつな気分。
　嫌いではないが、晴れた日の方が輝夜は好きだった。

「どーしたの、ため息なんかついちゃって」
　休み時間、廊下を歩いていると三宅ゆりに話しかけられた。

「あ、ゆりちゃん」
「元気ないわね」
「冬の雨って好きになれなくて」
「ああ、そういうこと。確かに寒いし、そのくせうじうじしてる感じは嫌かな」
「そういえばゆりちゃん、新しいお店ができたって知ってる？」
「え。そうなの？」
「うん、パフェが美味しそうなんだけど、一人は寂しいし。良かったらゆりちゃん、一緒にどう？」
「ＯＫ。そういうことなら、あたしがついてってあげるよ！」
　その後、手が出せない値段の新しい服の相談や、流行りの雑誌などについて話していると、突然風が吹いた。雨滴が混じってたのか、ゆりが悲鳴を上げた。
「冷たっ。ホント寒くなってきたね。あんたも風邪ひかないようにしなよ？」
「うん、ありがとう……そうだゆりちゃん、今日って体育館でバスケ部の練習試合があるみたい」
「バスケ部？　そういえば、掲示板になんか貼ってたっけ？」
「うん。たぶんそれ。友達も出るって聞いたし……応援に行かない？」
　輝夜の誘いに、ゆりは何かに気づいたように笑みを深めた。
「でもそれって、たしか男子の試合じゃなかった？　輝夜の友達って本当に『ただの』友達？」
「ほ、本当だよ？　それに熱気があって寒くないだろうし」
「ふーん？　まあいいよっ。ちゃんと応援して、ウチの学校にも勝ってもらわなきゃね」

　放課後、体育館に寄った輝夜とゆり。応援の甲斐もあってか試合は寝子中が有利に進めていく。
「うぅ、声援を送ってたらのどがちょっと枯れたかも……」
「輝夜、あんたって見かけによらず、けっこう声が出るんだね」
「練習試合なんだけど、自然と気持ちが入っちゃって。ゆりちゃんは、気持ち入れて応援してる？」
「あ、言ったな。あたしが本気で応援したら、勝利は間違いないからね？」
　一説によると、この日の勝利には、一部女子たちの熱心な応援が寄与したとも言われている。

「慎之介くん、カッコ良かったよ」
　試合が終わって、輝夜は青木慎之介に声を掛ける。慎之介が手を振った。

「イエス！　応援最高！　センキュ！」
「輝夜の友達って明るそうだけど、けっこうサムイ奴なんだね……」
　さわやかかっこつけな慎之介を、ゆりはそう酷評した。

　そのまま、三人で帰ることとなった。
「俺たちの動き、どうだった？」
「うん、みんなすごく頑張って動いてたと思う！」
　輝夜は運動神経は平均レベルなため、皆かっこよく見えていた。彼女の言葉に慎之介が気分をよくする。ゆりはそんな二人の会話を優先させながら、適度に言葉を混ぜていた。
「それじゃ、あたしはこっちだから。あんた、ちゃんと輝夜を送ってやりなよ」
「ゆりちゃん、今日はありがとう！」
「三宅先輩、応援ありがとうございました！」
　その後は、慎之介と家の近くまで一緒に歩く。たわいのない話は、時折雨が降ってることを忘れさせてくれる。
「また応援に行くから頑張ってね」
　別れ際、そう言った彼女に慎之介が傘を振って応えてくれた。
　――雨でもゆりちゃんや慎之介くんと一緒にいられたら楽しくなるね。
　大切な、友達。
「帰ったら今日の復習しなくちゃ」
　家までもう少しだった。テストにそなえないとね、と輝夜の足は軽やかに雨の中を進んだ。