寝子島キャンバス｜リアクション

寝子島キャンバス

　駅ビルの絵は大人数で仕上げの段階に入っていた。格子状の紙に描かれた線の全部が繋がった。色を塗る時には特大のクレヨンを使用。修が同色を束ねた物で効率は飛躍的に上がり、残すは一枚となった。
　最後の一枚は最大の功労者である修が仕上げた。
「ようやく完成だ」
　感極まった声で修は後ろに倒れ込んだ。両腕を開いて薄い青空を眺める。周囲から送られる祝福の声を聞き入るように瞼を閉じた。
「……ありがとう、皆のおかげだよ」
「真央ちゃんもがんばったのだ♪」
　真央がひょっこりと顔を出す。そうだな、と修は目を開けて微笑んだ。
「こんな大きいの初めてだぜ！」
「クジラもあって、大きいだらけでしたですよ」
　由貴と並んだフィリップが笑って言った。
「二人とも、よく頑張ったね」
　ロベルトは子供にするように二人の頭を撫でた。フィリップは少しくすぐったい笑みを浮かべ、由貴は子供扱いを怒りながらも受け入れた。
「八神さん、この絵は何を描いたものなんだ？」
　上体を起こした修に彰尋が聞いた。
「放送日までのお楽しみ、というのはどうだ？」
「それも悪くないな」
　彰尋は穏やかな口調で返した。
「し、しまったのだ！　すっかり忘れていたのだ。真央ちゃんの『ねころぼっくる五十匹描きまくるのだ大作戦』の進行中だったのだ～」
　制止の声も聞かず、真央は瞬時に走り去った。残された者達に爽やかな笑いを提供した。

　バスローブを着た修がゆったりとしたソファーに座って時を待つ。正面の大型テレビにはローカル番組が映し出されていた。指定された時間が近づいてきた。修はリモコンの録画ボタンを押した。
　テレビの場面が切り替わる。女性のナレーションと共に空撮の映像が流れた。修は前のめりとなった。
　駅ビルの屋上にサンマさんを咥えた巨大な絵の全体が映し出された。下の方には『Welcome To　寝子島』と一本のクレヨンが描いたような宣伝がはっきりと見える。
「テレビ映りは悪くないな」
　修は素っ気ない言葉で立ち上がる。その表情は素直で満ち足りた笑みを湛えていた。

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あとがき

担当マスター：黒羽カラス
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今回はクレヨンを使った大掛かりな落書きでした。その中には芸術の高みを目指した作品もありました。
子供達が無邪気に描く絵には、書きながら私も想像して胸がほっこりしました。油絵を描いていた頃が懐かしい。
テレビ局まで引っ張り込んで寝子島を大々的に宣伝する壮大なアイデアもありました。一人の力には限界があって、
皆様の協力のおかげでなんとか報われる最後を迎えました。え、巻き込まれたのではないのか、ですって！
そうかもしれないですが、アクションに書かれた場所が導いた結果と考えましょう、私が大いに助かります。

完成した絵を写真に収めたり、放送された番組を録画した方がいました。良い思い出になると思います。
アイテムとして形に残すこともできるでしょう。今後の行動で話が広がって盛り上がればいいですね。
そんなことを思いながら今回の話を終わります。参加してくださった皆様、ありがとうございました。

また、皆様にシナリオで会えることを楽しみにしています。

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