カレーが辛い件｜リアクション

カレーが辛い件

●エピローグ

　読者諸君、気がついていたであろうか？
　天神平庵が忽然と、話中盤で姿を消したのを。

　あのとき、
「かなりのスパイスを使ってると思うんだけど……原価率を下げつつも味を落とさない方法、興味はあるかい？」
　こう言ってしばし、ハイイドと話したのち庵は、そそくさと勘定を終え飛び出した。
　そうして、『ザ・グレート・タージマハル』の閉店まぎわに戻ってきたのである。多数の資料をたずさえて。
「庵さん！」
　ハイイドは彼女を歓迎した。チャイを作ってもてなす。
「今日、お客さんいっぱいだったね。でもみんなに言われたよ、辛い辛いって。喜んでる人もいたけど、大半はちょっと参ってた」
　うすうすは感づいていたのだ、ハイイドもその事実に。けれど今日、店を立ち上げて最高の客入りを見て、そして、色々な意味でストレートすぎる彼らの反応を目の当たりにして、ようやくこれを認めたというのが事実だろう。
「これで大騒ぎするようじゃ修行が足りない、って言いたいけれど、まあそれも仕方がないだろうね」
「だから私、辛くないカレーも作ろう思うよ」
「昼間も言ったけど、たぶん辛くなくしちゃったらこの味は再現できなくなるだろうから難しいね……」
　とはいえ手はあるんだ、と庵は荷物を広げた。
　スパイス……漢方薬のサンプルが入った小瓶が出てきた。それも、どっさりと数え切れないほどの種類が。
「色々試してみようか。今日食べたカレーまで辛くなくて、そこそこ旨いバージョンも作るつもりがあるなら試食は手伝うよ。あたしの好きな神農っていう古代中国の神様は、あらゆる薬草毒草を食べて自分の体で効果を試したっていう伝説がある。そんなノリだね」
「どうして庵さん、こんなに親切してくれるですか？」
　さあね、と言って庵は告げた。
「半分は商売、でももう半分は、旨いカレーをこれからも作ってくれるようにって、あたしからのささやかな応援かな」
「庵さんは素晴らしい人です！　日本語で言うと、えーと……そう、人徳者でーすよ！」
　ハイイドは尊敬のまなざしで彼女を見るのだった。よしてくれ、というように彼女は手を振って、
「どうせならサイエンティスト、いや、マッドサイエンティストと呼んでほしいな」

　しばらく、庵はこの店に通うことになるだろう。
　自分でこの店のレシピを分析するのも楽しそうだ。やりがいのある日々になるに違いない。
　そうしていつの日か、ハイイドはランチセットを注文する客に、
「辛いの大丈夫ですか？　オリジナルと、辛くないの、ありまーす」
　と言うようになるに違いない！

　『カレーが辛い件』おわり

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あとがき

担当マスター：桂木京介
ファンレターはマスターページから！

　ご参加ありがとうございました！
　今日もランチはインド料理店のカレー、それも辛さ最強を食べました！（実話）　桂木京介です。

　辛い辛い熱い話、いかがだったでしょうか。
　辛さが襲ってくるシーンでは、私は本当に汗をかいていました。なんというか、気合いが入りすぎると鼻の頭が熱くなるんですよね、そして額にもじんわりと……激辛カレーを思いだして汗をかくなんて、私はパブロフの犬なのでしょうか？（汗
　毎回言っていますが、ご意見ご感想ご要望など、たくさん下さると嬉しいです。
　……あ、批評はできれば甘口で……小心者ですすいません。

　さあ次回は、『【ハロウィン】寝子島ハロウィン☆デイズ！』ですね。
　すでにみなさんのアクションを読み始めております。楽しいリアクションにしたいと思っています。

　それではまたお会いしましょう。
　桂木京介でした！

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