ホクホク！　落ち葉でおいしく焼きイモしませんか？｜リアクション

ホクホク！　落ち葉でおいしく焼きイモしませんか？

【落ち葉集めと思い出話】

「五月おねえちゃん、華奈子おねえちゃん、よろしくお願いします！」
「小学校のなか、葉っぱのあるところへおつれします！」
　海美と玲音は、薄野五月と畑中華菜子にぺこりと頭を下げた。町長をレンガの場所へ案内した手腕を
買われ、新しく来た高校生二人組の先導役を任されたのである。
（町長さんにたのまれた、たいせつなおしごと！）
　海美がちらりと玲音を見ると、彼女も熱意あふれるまなざしで、竹箒をトントンと動かした。高校生二人組
から借りたものだ。
「海美ちゃんと、玲音ちゃんアルナ。こちらこそよろしくお願いしますアル」
「まかせてよ！　なんてったって、ここはボクらの小学校だからね！」
　竹箒を担いだ海美と玲音が先を歩き、猫車を押す五月と華奈子が後をついて歩く。
「そこ、はい水こうのふたがあってすべるから気をつけて！」
「そうなんですか？　どうもありがとう」
　海美の指摘に、五月がそろそろと歩みを遅くして排水口を通り過ぎる。
「アイヤー、私たちが小学校通っていたころ、こんなところに排水口あったアルか？」
「無かったような気がしますね」
「なんだか小学校の思い出が蘇ってくるアルナ」
「そうですね、まだ三年と少ししか経っていないのに、なんだか懐かしいです」
「五月ちゃんたちと遊んだ楽しい思い出、いっぱいアル」
　いそいそと落ち葉を集め、猫車に投入する二人の会話で、玲音は気づいた。どうやら彼女たちは寝子島小学校の卒業生のようだ。
「おねーちゃんたち、昔の小学校のこと、しってるの？　おしえておしえて！」
「海美もききたい！」
　玲音と海美がおねだりすれば、華奈子はどーんと胸を叩いて宣言した。
「いいアルよ！　お姉さんたちになんでも聞くアル！」
　なんでもと言われてしまっては、玲音と海美の好奇心が燃え上がろうというものである。
「ねぇねぇ、ブランコって昔からオレンジだったの？」
「いえ、昔は青でしたよ」
「華奈子おねえちゃんは鉄棒とくい？」
「あんまり得意じゃなかったアル。逆上がり、一生懸命練習したアルナ」
　校庭の鉄棒を見る華奈子の目は、海美にはとてもやさしく感じられた。いわゆる『遠い目』というやつだ。
「ジャングルジムは？　ジャングルジムでも遊んだんだよね？」
「……そうですね。華奈子さんが登ったまま降りられなくなったことがあって、あの時は大変でした」
「ちょっと五月ちゃん、そんな恥ずかしい話するなんてひどいアル！　内緒にしておいて欲しかったアル」
「ご、ごめんなさい……思い出したら、つい口が」
「華奈子おねーちゃん、おもしろーい！」
「玲音ちゃん、ここは笑うところじゃなくて、慰めてほしいアル！」
　ぷぅっと頬をふくらませる華奈子に、キャッキャとはしゃぐ玲音。海美は行く手に探していたものを見つけて、五月の服を引っぱった。
「あっちのけやきの木がはっぱたく山おとしてる！」
「ほんとうですね。この猫車が二つ、いっぱいになりそうです」
　海美と玲音はせっせと竹箒を動かし、五月と華奈子が集めた落ち葉を猫車に積む。積めるだけ積んだら、四人でぎゅうぎゅう押しつぶす。何回かそれを繰り返して。
「おしゃべりしながらだけど、結構集まったアルな」
「いっぱいいっぱいだ！」
「うん！　これでやきイモできるね！」
「一仕事終えた感がありますね」
　笑顔でハイタッチをする四人。
「では、こぼさないように受付に帰りましょうか」
「はーい！」
　五月の言葉に、残り三人は元気よく返事をした。