小さな夢を抱いて｜リアクション

小さな夢を抱いて

　銀色のツインテールを弾ませてミルカ・アハティアラが帰り道を急ぐ。買い物袋の中には夕飯の材料が入っていた。
　可愛らしいワンピースは傍目にコートのようにも見える。ツインテールを結ぶ、赤い実を付けたヒイラギが冬の装いに見せるのかもしれない。
「少し遅くなりました」
　屋台の前でぴたりと足が止まる。ミルカはワゴンに乗せられていたトナカイの縫い包みに紫色の瞳を熱心に向けた。
　ミルカはワゴンのトナカイを胸に抱えた。
「この縫い包みはいくらですか」
「五百円だよ。抱いて眠ると夢に出てきてくれるよ」
　夢という部分でミルカの顔が明るくなる。五百円ですね、と急に大人びた声で代金を支払った。トナカイを胸に抱えると、また表情が緩む。
　帰りの足取りは軽く、合間にスキップを挟んだ。
「おじいさんのお店にもトナカイはあるけれど、この子に呼ばれた気がしたから」
　赤ちゃんをあやすようにミルカはトナカイを扱った。
「名前はどうしよう」
　歩みが遅くなる。ミルカはトナカイの背中を摩った。
「……コメットにしよう！　絵本のトナカイと同じ名前でもいいよね」
　ミルカの足取りが軽くなる。