【ハロウィン】いぬねこ合わせてハロウィンパーティ！！｜リアクション

【ハロウィン】いぬねこ合わせてハロウィンパーティ！！

　　【響く音、眩しすぎた花火】

　夕方過ぎの闇がはっきりと見え始めた頃。
　わくわくしながらカボチャを被った聖籠あゆかは、楽しそうにあちこちを見て回りました。
「そこのカボチャさん、お花が使えるのは今日までだよっ。うちの品物と交換していかないかい？」
「ん～、どうしようかなぁ」
　ハロウィン祭は今日が最終日らしく、お店によっては既に片づけを始めているところもありました。
　しかし、事情もあり昼に出掛けられないあゆかにとっては、今が彼女の時間帯。
　開いている屋台を見て回るだけでも十分に楽しめました。
　そんな中、

「たいへんだー！　屋台の飴細工屋さんが倒れたぞー！」
「お、おれはだいじょうぶだ…す、少し休めば……夜の花火の歩き売りには……
　でも、ま、まだ材料が残っているのに……」
　なにやら大変なところに出くわしてしまった様子──あゆかはカボチャ混みの中を覗き込みました。
　見れば働きすぎてへとへとになってしまったカボチャが１匹。店頭では良く出来た手作り飴細工が並んでいます。
「飴細工なら作れるよ～。もしよかったら、わたしがお手伝いしようか～？」

「わ、渡りに船だ……！　でも、飴細工は難しいんだ……だいじょうぶか……？」
「う～ん、多分大丈夫～」
　そう言うとあゆかは道具を手に、いとも容易く、周りが驚くほどの手際でねこの飴細工を作ってしまいました。
　次はいぬ。どちらも平等に作り上げます。

　あゆかにとっては難しい飴細工も、とっても楽しい作業の一つ。鼻歌などを歌いながら、どちらもあっという間に作り上げてしまいました。
　周りは思わず拍手の嵐。
「すごい……！　これなら安心して屋台を任せられる……！　がくり……」

「うわあ！　しっかり！　がんばれ！　がっかりするんだーっ！」

　周りのカボチャがうろたえる余りに“しっかり”と“がんばれ”を混じらせながら叫びます。
「うんっ、任せて頑張っちゃうよ～っ」
　ぱたり、と倒れた屋台主さんにそう告げて、あゆかは次々と飴細工を作っていきました。

　お客さんは一気に増える一方。
　作る飴も様々。いぬとねこはもちろん、それぞれの世界でもやはり降るという雪の結晶。
　更には、人間界で見たという鉄で出来ていたという人形や、やはり人間界で見たと言う可愛らしいねずみまで。
　人間界に詳しいと分かると、カボチャのお客さんたちは、目を輝かせて、人間界のものを注文し始めました。人間界の犬と猫から、憧れだという文房具までの幅広さ。
「……うん、これは倒れちゃうくらいに目の回る早さだねぇ……」
　あゆかが呟く最中、小耳に挟んだところによると、どうやらこの屋台は毎年出ており、ここの飴をなめながら花火を見るのが通のなのだとか。

「なら、一層頑張らないとねぇ」
　うきうきしながら、あゆかが新しい飴細工を手掛けようとしたその時、

　ドンッ

　体を打ち震わす音と、眩しい閃光。
　あゆかは、その身を硬直させて、思わず飴を切る為の鋏を落としました。

「カボチャさん、だいじょうぶ？」
　お客さんの声で、はっと我に返ります。
「なに……今の？」

　ドン…ッ

「あー！　もう花火の時間だーっ」
「……ああ、なんだ花火かぁ……びっくりした～」
目の前のお客さんを最後に、何とか飴細工を渡して、あゆかはやっと息をつきました。
「だいじょうぶかい？
　きっと、働きづめで疲れたんだよ。お客さんも皆花火を見に行くみたいだし、少し休みなよ」
「う、うん……」

　その言葉に、あゆかは屋台内の椅子に腰を掛けました。
　丁度、屋台の中から花火が見えました。
　きらきら光っては落ちる閃光。
　さっきから続く大きな音。

　その場所は特等席のようにとても花火が良く見えて。
　こんなに綺麗なのにもかかわらず、さっきの感覚のせいで這い上がるような寒気が止まりません。
「(何か良くないことを思い出しそうな…なんだろう？)」
　あゆかはその正体を見出せないまま、呆然と目から逸らせない花火を見ていました……