【ハロウィン】いぬねこ合わせてハロウィンパーティ！！｜リアクション

【ハロウィン】いぬねこ合わせてハロウィンパーティ！！

　　【祭に音楽はつきものです】
　
　お昼から夕方に向けて、広場の噴水を背に、様々な荷物をもったカボチャたちが集まってきました。榛宮智は置かれた金色の楽器群に感銘の言葉を洩らします。
「あ……クラリネットに、リコーダー──あ、サックスがある！」
　楽器の準備をしていた白と茶色のぶち毛皮をしたカボチャが言いました。
「そこのカボチャさん、楽器詳しそうだねぇ。良かったら何か一緒に演奏していかないかい？」
「えっ？　いいの……っ！？」
　智は、胸を高鳴らせながら準備している音楽隊の側に向かってサックスを手に取りました。
　いぬねこの標準にしてはかなり大きく感じましたが、どうやら吹き口にいぬねこ演奏用のリードがついていて、そんなに苦しくも無く、楽器からは軽やかに音が流れ始めました。
　その綺麗な音色に驚いた他のカボチャたちも、慌てて手元の楽器で合わせるように音楽を奏で始めます。

「がっきうまいねー！」
「一層きらきらしてるよ！　金属の細工物は僕たちの世界ではまだここまで作れないよ！　全部人間界から拝借してきているんだ！
　いつか作れる位にぼくたち凄くなれるかな？」

　──智は、曲間の間に何か、聞いてはならないものを聞いた気がしました。

「人間界から拝借って……ドロボウはダメだよ……！
　お店の人困っていると思うよ」
「ええっ！」
　戦慄を受ける楽器を持ったカボチャたち。

『またたびとジャーキー置いてきたのに！』

　そう──そこには“人間界では、またたびもジャーキーも通貨としては成立しない”事を知らなかったが為に、今まで誰も注意するいぬねこが居なかったのです……

「君たちもお店のもの取られたら困るでしょ？
　お祭りが終わったら返せるものは、僕がそっと返しておくよ」

「それじゃあ、今はだいじょうぶだねっ！　おにいちゃん、楽器吹こうーっ！！」
「うん……そんなに長く借りるって訳でもないし──うん、今は……演奏しよう」
　今手の中にあるものが、人間界の借り物だと知って、智は一気に心臓が跳ね上がりましたが、目の前では演奏を待ちわびるカボチャたちの集まりがもうしっかりと出来ていました。

「うぅ……緊張するなぁ」
　智は震えるような声で、それでも気合を入れてサックスの演奏を始めました。

「まあ……素敵な楽器の音ですね」
　そこを、１匹のカボチャが通り掛かりました。
　白浜渚はいち早くに広場に到着したものの、あまり品物を購入する気にはなれず、手には二輪の花を持ったまま。
　今日はウィンドウショッピング。そう決めて。

　しかし、その中でも少し意外なのが、洋服屋さんの屋台があった事でしょうか。
「いぬねこに普段、祭以外で服を着る習慣は少ないけれども、実際にお祭ごととなれば話は別だよ！
　さあさ、今日の為に愛着を持って縫い上げたカボチャ洋服はいかが？　今日カボチャの洋服を着れば、きっと注目度間違い無しさ！」

　渚は大変困惑しました。ねこになれてカボチャまで被って、隠れて顔が見えなくなったというのに、それで注目を集めてどうしようというのでしょうか。
　渚は慌てて、その場から急いで逃げるように立ち去ったりして。

　そうして、握る手を飾る二輪の青白の花を手に持ったまま、ウィンドウショッピングでここまで来た渚は、演奏中の楽団の中にサックスを吹くシーズーらしき犬の姿を見ました。
　「あら、あのカボチャさんは……」
　お祭に来た時に会った気がします。あの時は大層震えていたのに、今は楽器を吹く姿がとても様になっていました。

「屋台も一巡りしましたし……。
　花火まで、ここで時間を潰すのも悪くありませんね」
　そう言って、その場に立ち止まる渚。
　場は、一気に音楽を聴きに来たカボチャで一杯になりましたが、誰も渚の事は見ていません。
　こんな時間が得られた事を嬉しく思いながら、渚は軽快に奏でられる音楽に楽しげに耳を傾ける事にしたのです。