寝子島３０００周年記念！｜リアクション

寝子島３０００周年記念！

＜現代＞
　この数日、修は虚ろに日々を過ごしていた。
　現在に戻ってきても、彼が目にしたデストピアの姿は頭から離れない。

（俺は、当たり前のことを、当たり前に思う。ただ、それだけなんだ）

　武器を取らぬ革命という、青年の理想は正しい。
　だが、資源などの政治の力学の問題は残る。
　寝子島は小さいが、海洋政治学的な影響は計り知れない。将来資源開発が進めば、どれほど価値が高騰するかしれない。
　そのとき、理想だけでは守りえない。
　修の中の、ひどく現実的な部分がつぶやいた。
（権利も正しさも、力がなければつぶされる。平和ボケしたギリシアのアテネ、東ローマなど、世界史に例は多い……）

　それでも、青年の瞳の光は、こまやかな修の心に焼き付いていた。
　もし、政治家となるのなら、ああした心の傷を、数限りなく負うことになるのか。

　修の心配をするかのように、身を寄せるコーギーを、そっと撫でる。

　散々多次元を放浪し、桜庭円は帰路に就いた。
　大量のレポートが仕上がった。これはブログに放流してもいい。
　疲れ切った円とにゃーくんを、にゃーくんの子猫が５、６匹迎える。
「おかえりー、パパ」
「いいこに、してたかー」
　交わされる会話にほっとして、ソファに荷物を置き、

　そして円は、ある違和感が身内に湧き上がるのを感じる。

　今、何が起こったのか？
　聞き間違いでなかったら、なにかトンデモないことが起こったのではないか？

　じっくり、今の出来事を反芻する。
　にゃーくんは、じっと円を見ている。
「あわわわ」円の口から、震え声が漏れた。「これって」

　素知らぬ顔で、にゃーくんは、にゃあと鳴いて見せた。