寝子島３０００周年記念！｜リアクション

寝子島３０００周年記念！

＜百億の昼と、千億の夜＞
　トラス構造の広壮なアトリエは、天井を透かして見ることができる。
　無窮の夜空が、その彼方に広がっている。
　旅鴉月詠はそこで、カンヴァスを前に、ひたすら色を重ねていた。
　コントラスト、諧調。独立した色が混ざり合い、まったく別の色彩を作る。
　あてどなく配置された色が、やがてつなぎ合わされ、星座のように組み合わされた。

「世界は」誰にともなく、月詠はつぶやく。
「私が今いる世界は、いつの間にか変わっていったんだ。人類は……早すぎる」

　素早く絵筆が動く。
　――科学は進化し、人類はあらゆる問題の解決を、宇宙に求めた。
　情報化が極限まで推し進められれば、ゼロのような明確な目標のある未来でない以上は、次なるフロンティアは宇宙。
　人間の欲望は果てしない。

「『20XX年、世界は核の炎に包まれた』なんてことは結局なかったね……」

　自然災害、対立は数限りなく起こったが、それは『魔女』の目から見れば、誤差の範囲。
　あらゆる悲しみ、苦しみを引き受けようとするのでない限りは。看過すればよい。

「『この星は疲れてしまった』と、誰かが嘯いたのは、何時だろうか？」

　宇宙開拓によって、資源問題には代替案が作られた。人口減少による都市の問題もあったが、それが自然環境の回復につながった。
　ホメオスタシス。些細な変調により、世界は平穏のまま。
　世界はおおむね、緑と青に覆われる。

　何時の間にか多元宇宙とつながり、魔法なり精霊なり妖怪なりが、大手を振って歩くようになった。
　あらゆる怪異は白日の下にあり、時空監督省により、多元宇宙が綜合的に監視されるようにもなった。

　なべてこの世はこともなし。

「私が、そこで何をしているのかって？」カンバスから目を離し、月詠が答える。
「……見てるだけだよ」
　この島に、のんびり住んで、気の向くままに画布と対峙する。
　とある事情で『魔女』となった。時間は無限のものになった。
　それでも３０００年という時間は、彼女にある種の感慨をもたらした。

　――見てるだけだ。
　――神になったわけではないけれど、観察者として、人間の行く末の絵をかきながら。

　砂時計の砂が落ちた。
　また、数千年が過ぎた。

「やあ、落神」傍らに立つ影を見ようともせず、語り掛ける。
　久方ぶりの来訪者だ。
　アホ毛がピンと太陽風に揺れる。

　どんな感じ？

　
　気安い問いに、月詠はふっと笑って、

「世界は、おおむね平和だよ。

　――フツウかどうかは、わからないけどね」

　宇宙に、風が吹く。
　始原の風、ハイパーボリア。エメラルドの風を散らして、エーテルの気流が巻き上がる。
　あらゆる喜びと、あらゆる悲しみが、指呼の間に行き交った。

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あとがき

担当マスター：ぱーすぺ
ファンレターはマスターページから！

ありがとうございました！

かなりお任せ気味の、高難度なシナリオになってしまいましたが、皆様の思いのこもったアクションをいただきました。
自分位のマスターが、こんなアクションを拝受してよいのかと恐れおののいてしまいました。
ギャグにしてもシリアスにしても、時間や世界に対する深い洞察の感じられるアクションばかりでした。
皆様の素晴らしさを、少しでも伝えられたらうれしいです。

また、熱いアクションをいたしましょう。

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