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◆終章「侵略する者」
上空千二百メートルの主戦場よりも更に数百メートル上空へ上がったその場所に一人の男が浮かんでいる。
ローブのような黒い衣装を身にまとい、整った顔立ちの青年は眼下に広がる戦場を見下ろしていた。
「なかなかやるではないか、この世界の者達も。だが所詮は彼らも駒に過ぎない。駒が駒であることを忘れ、大将の存在も曖昧な今の状態では……我らに勝つことはできない」
「それはどうだろうな。そういうのはやってみないとわからない……ってもんじゃねえか?」
眼鏡をかけた青年――ハガルの鋭い瞳が彼を見据えた。
黒い銃を片手に持ち、戦闘態勢を崩さずに滞空していた
曖浜 鴻
はしっかりとした眼差しでハガルの全てを見下す様な視線に対峙している。
お互いを敵であると認識したうえでの静かな語り合い。
それは激しい戦闘の前哨戦ともいえた。
「ほほう、この場まで上がってくる者達が出てくるとは。なるほど、そちらには良き将がいると見える」
涼しげな顔をしていたハガルの口角がにやりと上がる。その表情は新しい玩具を見つけた子供の様に心底楽しそうな表情を浮かべていた。
「このまま話してたいところだがよ、もう時間がねえんだ……さっさと決めさせてもら――――がっ!?」
ハガルまで一直線に飛び込もうとした鴻であったが腹部に痛みを感じ、体勢を崩す。
ふっとハガルの姿が鴻の視線から消えると瞬時に彼の目の前へとハガルは現れた。
「な……ッ!?」
「どうした、早く決めるのではなかったのか……?」
瞬きをするよりも早く、ハガルの攻撃が鴻へと打ち込まれた。
魔力の込められた輝く拳による一撃は鴻の身体に深々とめり込み、彼の身体を大きく後方へと吹き飛ばす。
「ぐうぅあああああーーーーッッッ!!」
吹き飛ぶ鴻を遅れて到着した
天満 七星
、
音羽 紫鶴
の両名が大きく手を広げて受け止める。
成人男性の全体重と攻撃による加重が全て二人に襲い掛かるが、なんとか受け止めることに成功した。腕には若干のしびれが残っているが。
七星が心配そうに鴻の顔を覗き込んで問い掛ける。
「大丈夫ですかっ! どこかお怪我は……!」
「ぐ、問題ねえ……。あいつ、剣で貫けるタイミングにわざと打撃で攻撃しやがった……ずいぶんと、甘く見られたもんだ」
紫鶴が武器を構えハガルの動きを警戒する背後で鴻は自らの意思で空に浮かぶ。
ぐいっと口の端から垂れた血を拭うとハガルを睨み付けた。
「流石に、甘く見られてばかりってのは……性に合わないんでな! やるぞ!」
再び飛び込む鴻を援護するように紫鶴と七星が続いた。
その様子を見たハガルは顔に手を当てて笑う。目を見開いて笑うその様は常軌を逸していた。
「くく、実にいい。その感情、気概……力。称賛に値する。もっと、もっと、見せてみろ……お前達の守るべき者達の為の力という奴をな」
ハガルが上空に手を振りかざすと空に開かれたあの大穴からローパーの一団が現れる。
その数は恐らく二十や三十は軽く超えているだろうことが数えなくてもわかった。
突進する三人と魔物の群れがぶつかる。
もっとも近い敵を三体選出し、七星は飛びながら二度、三度矢を放った。
空を裂く様に撃ちだされた矢はローパーの中心を真っ直ぐに撃ち抜く。中心を撃ち抜かれたローパーは形を維持できず、崩れる様に空に溶けた。
ならばと他のローパー達は触手を伸ばし遠距離攻撃に切り替えたが、素早く身を翻す七星の回避行動は彼らが七星を捕まえる事を許さなかった。
くるくるとローパー達の周りを円移動するように飛びながら七星は一つ、また一つと仕留めていく。
ローパー達はなおも諦めずに触手を放つが空を切るばかりで意味を成さなかった。
七星から少し離れた位置で紫鶴もまた敵との交戦に入っていた。
絶え間ない触手の連撃を躱し、彼はその懐深く肉迫する。膝蹴りを打ち込むと触手を掴んで力の限り投げ飛ばした。
触手を揺らしながら情けなく吹き飛んだそいつは他のローパー達とぶつかって身動きしなくなる……いや身動きができなくなったようだった。
みれば彼らの触手が複雑に絡み合い、個々に蠢いている。もがいているが解けない様であった。
しめたと懐から氷の小瓶を出し、紫鶴はぐいっと飲み干した。口の中に何とも言えない味が広がる。できるならば吐き出してしまいたいと思いつつも彼はそれに耐えた。
身体を左に半回転させつつ扇状に矢を紫鶴は次々と放った。彼の放った矢がローパーに命中すると命中した部分から次第に凍り付き始め、数秒後には見事な氷の彫刻が完成する。
接近してそれを蹴り飛ばして砕くと再び弓を番え標的に狙いを定めようとした時、悲鳴に気づいてその方を見る。
「あぐ、うう……あっ」
そこには不意を突かれたのだろうローパー数体に絡め取られた七星が身動きを取れずにいた。
粘液をどろりと滴らせた触手が彼女の腕や足を這い回り、汚していく。
首を絞める触手が彼女の口に襲い掛かるが、七星が必死に抵抗し口周辺を粘液でべとべとに汚すだけに留まった。
綺麗な着物は絡み付かれた部分が変色し、元の意匠が台無しにされている。
自らの力でなんとか振り解こうともがく七星であったが、身動ぎすればするほどに着ている物は乱れ、僅かに肩や足が露わとなっていく。
触手は更に進行、彼女の着物の中へと侵入し這い回ってあらゆる着物の隙間からうぞうぞと飛び出してくる。
彼らローパーの目的は一つ。対象の肉体を侵食し、支配下に置くこと。だがその為には対象の肉体の内部に侵入しなくてはならない。
ゆえにローパーの触手は形を変え、大きさを変え……耳、口、涙腺、鼻の穴など……体中のありとあらゆる穴という穴を目指しているのである。
(まずい、あのままじゃ侵入されてしまうのは時間の問題か!)
弓を持つ紫鶴が手をこまねいているのには理由があった。
ローパーは紫鶴に気づいていないからこそ、七星の反応を楽しみながら侵入できる穴をゆっくりと目指している。
現に支配するだけならば口の前でちらつく触手を無理矢理に鼻など防ぎようのない箇所から侵入させればいい。だがローパーはそうはしない。
全ての穴に一つずつ王手をかけ、絶望と恐怖で心を揺さぶり準備が整い次第一気に全てを貫くつもりなのだろう。
そうなれば弱った心ではローパーの支配に抗う術はない。実に卑劣で悪趣味且つ確実な手と言える。
(一撃で仕留めないと、もし仕留めそこなったら触手が逃げられまいと即座に侵入してしまう……)
今の紫鶴の位置と七星がいる所は決して距離的にはローパーの中心核を狙えない場所ではない。
問題となっているのは上空から降り注ぐ異界の地面の破片と言える土の塊や何かのパーツのような細かい機械部品などの障害物であった。
このまま無理を押し、必中の一射を放ったとしてもこの位置では障害物に阻まれ、最悪の場合一撃も加えられずに察知されてしまうかもしれない。
どうするかと考える彼の目に一際大きな土の塊――地面と言える大きさの土塊がゆっくりと落ちて来るのを発見した。
(僕にできるかわからない。でも、こういう時はやるしかッ!)
覚悟を決めた彼は土塊目掛けて努めて音を出さずに軽やかな身のこなしでふわっと跳んだ。
土塊に音も無く着地した彼は即座に飛ぶ。それは流れる様な美しい身のこなしの飛翔。無駄な動きは一切なかった。
宙返りをするように空を飛び、七星を拘束するローパーの背後を取る。
気配に気づきローパーは振り返るが、その瞳に最後に映ったものは自らに向かってくる矢であった。
ずちゅっと肉に突き刺さる鈍い音を立て、ローパーは絶命した。
七星に絡み付いていた触手はその肉体と共に塵となって消える。
「間一髪って感じだったか。なんにせよ、間に合ってよかったよ」
「けほっけほっ。あ、ありがとうございます……」
触手に絞められていた喉をさすりながら七星は紫鶴に礼を述べた。
二人は会話もそこそこにある地点へ飛ぶ。ゆっくり会話している暇はない。
なぜなら、その二人の視線の先ではハガルと鴻が激戦を繰り広げていたのである。
「ははっ……くそ、指一本……触れられねえ……の、か……」
歯を食いしばる鴻は血だらけの身体に鞭打ってその場に滞空していた。
既に戦闘態勢を真面にとることはできず、左腕が力なくぶらりと下がっている。
「もう終わりか? この世界の憐れな駒よ」
「ぬかせっ……まだ、終わっちゃ……いねえッ!」
闇の銃に力を送るイメージをし鴻はそれをハガルに向け引き金を引いた――――――――が、何も起こらず悲しく金属のカチッという音が辺りに響いた。
「終わったな、貴様はその銃に見放されたらしい」
「……ッ!」
ゆっくりと時が進む世界の中、ハガルの手が鴻に向けられる。
「駒にしてはよく頑張った。褒めてやろう。せめてもの手向けだ……一撃で――――終わらせてやる」
ハガルの手を中心に円形に展開された半透明の剣が一斉にその切先を鴻へと向けた。
「死ね」
言葉と同時に一本、また一本と剣が鴻に飛来する。
必死に拳撃で打ち落とすのだが身体は上手く動かず、打ち漏らした剣が肩や足に突き刺さった。
身体中から血を流し痛々しい姿になってもなお彼はその場から退くことはなかった。
「なぜだ、とっくに絶命してもいい程の傷は受けているはず。何がお前をそこまでここに繋ぎ止める?」
ぐふっと血を吐きながら鴻はそれに答えた。
「あの島にはなあ……この命張ってでも、守りたいもんが……あるんだ。だからよ、ここで、退くわけには……」
(あいつを倒せるだけの、力が欲しい! 守りたいものを守れるだけの――力が!!)
鴻のろっこんが発動、身体の筋力が増強されるそのろっこんは彼に再び戦う力を与えた。
(筋力の増強でダメージを受けた部位のフォローをさせての戦闘だとせいぜい戦えて数十秒か……!)
一瞬で高く跳び、鴻はハガルの視界外へと移動する。
(奴の攻撃は確かに速いし予測不可能だ。しかし、奴は攻撃の際には必ず腕を動かして指示の様な動きを見せている……ならば視認できる範囲外からなら!)
そして鴻の全体重を乗せての踵落としが上空からハガルを急襲した。
踵と咄嗟に展開された魔法陣がぶつかって火花を散らす。
「惜しい、目の付け所はよかったぞ。だがこれでは私にはまだ触れられ――――」
「そうだな。触れられないのは分かっていたんだよ……だが、確証を得た事が一つだけある。視界の範囲外からの攻撃に対しお前は剣を出していない。
反応速度が俺達以上なら、剣を出して反撃した方が防御するよりも確実に息の根を止められる……だがお前はそれをしない」
鋭い鴻の視線が静かに睨み付ける様なハガルの視線とぶつかる。
「しないというよりは……できなかったんじゃねえのか。俺はそう思った…………だから届かない事は承知で仕掛けたんだよ」
ふっとハガルの口元が緩んで微笑がこぼれた。つられて鴻までもが微笑する。
「そうか、そこまで掴んでいたとはな。流石に予測はしていなかったぞ、自らの身を犠牲にしてまでも後に続く味方の役に立とうというその姿勢……敵ながら見事という他あるまい」
「褒められても何も出ねえよ……こいつの弾以外は……なッ!」
零距離ともいえる至近距離でハガルの顔目掛けて銃を向けた鴻は引き金を引く。
「今度こそ、お前が終わりだ! ハガルッッ!!」
銃の装甲のラインが輝き、黒い光が銃口から放たれた。
瞬間的にハガルを守る防御魔法陣が幾重にも銃口に向けて展開され壁となったが、黒い光は膨張しながらそれを引き裂きそのままハガルを飲み込んで爆発を起こした。
肩で息する鴻の手から闇の銃が滑り落ちる。もう彼の身体には銃を握っているだけの力さえ残されてはいなかった。
全身から力が抜け、心地良い眠気が彼を襲う。次第に閉じていく瞼の間に見えるのは煙から飛び出し浮かぶハガルの姿。
半身を焼かれ、衣服の半分から先がぼろぼろとなっているがその身には傷はついていない。とはいえ、左腕が力なく下がっている所を見るに片腕は奪えたらしい。
(はは、タフだな……あいつ。片腕だけでも持って行けたのが……せめてもの、救い、か――――)
目を閉じて落ちていく鴻を見据えてハガルは言う。その声色はとても楽しそうだ。
「面白い、これだから駒というものは侮れないのだ。このフェーズで片腕を使用不可能に追い込まれるとはな。鴻……健闘したお前に敬意を払おう。無様に落下し地面へ衝突して終わるよりも――――この空に散れ」
落下していく鴻に狙いを付けるとハガルは右腕を振り上げ剣を展開。そのまま勢いよく放った。
真っ直ぐと鴻の頭部に向かって飛ぶ剣。
それは殺意のみで放たれた攻撃とは違う。
死力を尽くして戦い、その生涯を終ろうとしている者への手向けの一撃。
無力な人としてではなく、戦いの中で『戦士』としてその道に終止符を打つ。
それは戦う者達にしかわからない美学の様な物であった。
死を運ぶ剣が彼の頭部に近づく。
死神の足音と共に。
力を使い果たした鴻は微動だにしない。
今まさに命中する――――といったその時、甲高い衝突音と同時に剣がその軌道を変えた。
髪の先を掠る様にして剣は空の彼方へと飛び去って消える。
下方から
鈴野 海斗
が援護狙撃を放ったのであった。
「今だべッ! 早く曖浜さんをッ!!」
続け様に放たれる援護射撃の間を縫うようにして味方が鴻を受け止めて抱えると戦線離脱する為に後方へと飛び去って行く。
(生き延びたか、鴻よ。なかなかに悪運の強い男だ……次に相対する時を楽しみにしておくぞ)
飛び去っていく鴻を追撃せずに視線だけ送って見送るとハガルは眼下の人物に目を向ける。
彼は先程から鋭い援護狙撃で此方の手を発動前に封じてくる。実にやっかいな攻撃を放つ男であった。
やっかいな男ともいわれた海斗はさして気にする風もなく、瓦礫の間を跳ぶ様に移動する。
ハガルは海斗の進行ルートを限定するように剣を飛ばすが海斗を捉えることはできない。
空に滞空する戦闘艇や船の瓦礫を盾にしながら狙撃ポイントを三次元で的確に変えていく。
瓦礫の陰に隠れた海斗は闇の銃のエネルギーゲージに目を落とす。
全体の三分の一程度残っている様に見て取れるそのゲージは紫色に発光していた。
テューアの説明を思い返す限り、これは撃つことのできる目安の量らしい。ゲージが空になった状態で撃てば……命の保証はできない、用はそういう事である。
「命をかけずに勝てる相手じゃない……全力でいかないと……あいつには勝てないんだべ」
自らの意思を再確認した海斗は瓦礫の陰から躍り出た。
突撃銃の様な姿に変化させた闇の銃の銃床を肩に乗せ、安定した姿勢で放たれる銃撃は的確に飛びハガルの足元で弾ける。
当たる一瞬前に防御陣を展開したハガル本人には無傷ではあるがそれでも彼の体勢を崩すには至った。
「もらったべッ! 年貢の納め時だっちゃッ!!」
空中を蹴って姿勢低く突進、牽制の為に放たれたであろうハガルの剣を擦れ擦れで躱しながら銃撃を放ち続ける。
(銃撃が連射され続ければ防御陣を常に張っていらざるを得なくなる……そうなれば展開した防御陣を解除して再展開はできないはずだべ。いくら堅牢な防御でも続け様に攻撃に晒され続ければ――)
ハガルが展開している青い魔方陣が描かれた防御壁の中心に音を立ててヒビが入る。
「ぐっ……こやつ……ッ!」
「はあああーーーッ!」
闇の銃を剣の様に振り抜くと、ハガルの張っていた防御陣が甲高い音を立て粉々に弾け飛んだ。
微細な光の粒子になった防御陣の欠片が舞う中を駆ける。
海斗は念じた。強く、強く。この場を退くわけにはいかない。フツウは自分達が守るのだと。
「想いだけでは……何も成せぬよ。必要なのは貫く意思と覚悟。そして何よりも必要なのは――――」
背後から飛来し海斗の背中に突き立った剣が更に強く押し込まれると、彼の胸部から血が噴き出した。
口から血を吐きながら海斗は震える手で闇の銃を目の前のハガルに向けようとする。
出血量が多いからだろうか、視界が霞みうまくハガルの姿が捉えられない。
「がふっ……ぐっ、あ……ぐふうっ!」
「――――実力だ」
息をする。空気が吸い込めずにひゅうひゅうと喉を鳴らした。
その間にも彼の胸からは流れた血は衣服を真っ赤に染めていく。
ふっとその姿が消え、目の前に現れる。
ハガルは海斗の手を絞める。ぎりぎりと絞められた手は既に抗う力を持たず……闇の銃は眼下の空へと落ちていった。
即座に腹部へ膝蹴りを打つとハガルは浮き上がった海斗の身体を無遠慮に殴り飛ばす。
受け身も取れないままに吹き飛ぶ海斗は数百メートル程吹き飛んだ所で再びハガルに掴みあげられる。
「理想を語るのはいい。自らの目指す思想を追い求めるのもいい。それらは実に崇高な行いなのだから。さて、お前の望む未来は、抱える想いは……なんだ?」
「オラ、の望むのは……一つ、だ、べ。ただ、このフ……ツウ、を守りた……い……それだけ……だ」
「そうか、それが望みか。だが――――」
動かない腕ではない方――右手で海斗の胸をハガルは貫いた。同時に無数に表れた半透明の剣が彼の身体に突き刺さる。それはまるでハリネズミのようだった。
口からひときわ大きな血塊を吐き、海斗の目から光が消えていく。
「それを行うには……足りなかったな。実力が」
腕を引き抜くとごみを捨てるかのように眼下へと彼を投げ捨てたハガルは背を向け、その場を去っていく。
地表に向かってゆっくりと落下する瓦礫に仰向けに横たわり、彼はその場に血だまりを作った。
心臓は辛うじて無事ではあるが、体中に空けられた穴から出血しその量は既に致死量を超えている。死亡するまでは時間の問題であった。
薄れゆく意識の中、彼の傍に闇の銃が見えた。どうやら瓦礫の隙間に引っ掛っていたようである。
震える手を伸ばすとその指先が触れ、隙間から彼の胸へと闇の銃が落ちる。
「気に入らねえ奴のいう事は聞かねえ銃。お前みたいにやりたかったべな。でも……ちからはいんね……けんど、オラ……やらねばならんことがあるだべな、ここじゃ……終われねえ……なのに、身体……動かな……」
ドクンッと何かが脈打つのを海斗は感じた。
「そうだべな、今は、オラがお前の……使い手だべ。もってけるもんは……全部持って行け。その代わり、あいつを……フツウを守る力を……オラに!」
闇の銃の装甲が開き、巨大な目が現れる。闇の銃――それは黒い流動体となって彼の身体を覆った。
黒い闇の甲冑を身に纏ったような姿となった海斗は再び立ち上がる。
「突撃準備よし。いくべ、オラ達のフツウを守るんだべッッ!!」
瓦礫を蹴り上げ彼は飛翔する。
痛みは感じない。これならばやれる、全身で彼はそう感じていた。
「ハガルウウウーーッ!!」
一瞬で彼の背後を取った海斗は雄たけびを上げながら黒い装甲に包まれた拳を振り抜いた。
咄嗟の事で判断の遅れたハガルが防御陣を展開するよりも早く彼の拳が届く。
巨大なハンマーで殴り飛ばされたような衝撃がハガルの肉体を襲い、彼を大きく吹き飛ばした。
錐揉み回転をしながら中型船の残骸にハガルが衝突したのを確認すると両腕を前に出し海斗はエネルギーをチャージし始める。
紫色のラインが身体中に走り、大きな黒い獣の口と化している両の掌に集結していく。
「これが、オラの……フツウを守りたいって想うオラの! 全力だべーーーーッッ!!」
両の掌から巨獣の咆哮にも近い爆音と共に空気を振動させ紫の光が放たれた。
螺旋状に回転しながら二筋の光は絡み合い、巨大な光となってハガルへ向かう。
「ぐっ……調子に乗るなァッ!!」
片腕を薙ぎ払う様に振るい無数の光球を生み出したハガルは右手の指先でそれをなぞる様に操作し繋ぎ合わせた。
線で繋がれた無数の光球は回転を始め、巨大な魔法陣が顕現する。
それは強固な防御壁となって紫の光に立ち塞がったが――――まるで紙を破る様に引き裂かれ直進した紫の光が獣の口を模した形となってハガルを襲った。
「があああああ!! ぐううぅうぅああああああ!!」
黒い甲冑が消え、近場の瓦礫に着地した海斗は力なくその場に崩れ落ちた。
身体に空いていた穴は全て塞がり、出血もしていない。これは闇の銃の贈り物だろうか。
背を瓦礫に預けた海斗に下方から急激な勢いで現れた
奈良橋 博美
が声を掛けた。
「凄い傷っ! 今すぐ手当を……!」
「オラの事はいいんだべ、それよりも……あのタフなあいつを!」
海斗の視線の先には赤黒い稲光を纏い、ただならぬ気配を醸し出しているハガルがいた。
「アレは一体――――!」
再び海斗の方を向くと彼は意識を失っている様であった。
幸い脈はある、直ぐに死亡するということはなさそうである。
後続の到着した他の者に彼を任せ、博美は単身ハガルへと向かう。
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SF・ファンタジー
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定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年05月10日
参加申し込みの期限
2015年05月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年05月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
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