怪人セブンの暗躍｜リアクション

怪人セブンの暗躍

【20時09分　星ヶ丘駅】

　会食は無事に終わった。
　屋敷野の懸念は杞憂に終わり、あのあとはつつがなく食事は進められたのである。

「……職場放棄の罰として、送迎役に任命します」

　双子メイドがホテル前で不審者として通報されたことで、２人の存在が泉月花に露見してしまった。
　泉月花は双子メイドの給料３ヶ月分から天引きする形で最上級の送迎を用意させたのだ。
　この雇い主、鬼である。
「寝子島って面白いねー！　ただのクソ田舎だと思ってたけど！」
　星ヶ丘駅に駐車しているリムジンに乗り込む魅紗歌はそう言って見送る英雄たちと壺職人に手を振った。
「今日は長い一日でしたね……」
「お疲れ様でした、泉月花様」
　双子メイドの妹、志桜月が当たり前の顔してくつろいでいた。
「さぁ、泉月花様。お飲み物などいかがでしょうか？」
「志桜月。あなた、当然のように車内にいますが、本来は姉と一緒に帰るべきでは？」
「それはできません。憤怒女給の二つ名に従い、ここで給仕させていただきます」
　頑なに職務を全うしようとする志桜月に泉月花は呆れ返っていた。
　手配した運転手が「どちらまで？」と尋ねてきた。
「ちなみに、運転手の人件費は予算が足りませんでしたので、泉月花様、お願いします」
「……あなたは姉と一緒にたっぷりお説教ですからね、志桜月？」
　泉月花はやむなく、自腹で運転手にギャラを支払うのであった。

「さぁ、私たちも行きましょう、日登美様」
　一方、姉の笑來月は日登美に犬用の首輪とリードを括り付けていた。
　そしてヘルメット姿の笑來月は何故かメイド服のままバイクに跨っていた。
　リードはバイクの荷台に括り付けられているのを見た日登美は恐る恐る尋ねた。
「これはどういうことなのかなぁ、にっこりん？」
「市中引き回しの刑です。泉月花様のご命令です」
　笑來月は機械めいた抑揚で即答した。
「アイエ！？　ボクちゃん死んじゃうよ！？　というか、にっこりん！　二輪免許持ってたの！？」
「15歳ですから」
　やはり即答だった。
「島に来るまではこれに乗ってきました。ちなみにこの子の名前は『武田３号』です」
「そーなのかー。って、そうじゃないってヴぁ！？　この格差は何！？　あとなんで武田！？」
「私たちのお給金３ヶ月分ではリムジン１台が限界でした。では参りましょう」
「ねぇ武田は！？」
　エンジンを吹かす笑來月に日登美は英雄たちに捨て台詞を吐いた。
「いっちーはああ言うけど、ボクちゃんは和睦に反対だもんげ！　次に会った時はギッタンギッタンのバッコバコに」
「出発します」
「あばばばあばばばまだ途中ぅぅッ！」
　日登美は引きずられまいと必死に笑來月のバイクを全力疾走で追いかけるのであった。
「……あ、こけたな」
「ええ、こけたわね……」
　楢木と黒依は引きずられる日登美をただ見送る他なかった。

＜叢雲側：全スケジュール完遂＞
＜英雄側：『怠惰』の黙示録を獲得＞

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