【ハロウィン】和風ハロウィンはいかが？｜リアクション

【ハロウィン】和風ハロウィンはいかが？

　都はちょうどステージの演目が見やすい席に案内されていた。見事な舞が間近に見られた事を幸運に思いながらカボチャの茶巾絞りを食べつつまったり。とっても美味しい甘味に思わず表情が綻ぶ。
（美味しいお菓子に、すてきな音楽と舞。すっごくラッキーかもしれん）
　そんな事を思っていると、席が満員なので相席でよろしいでしょうか、と店員さんに言われる。それに肯くと愛らしい着物の日和と、渋く凛々しくきまった直治がやってきた。
「よろしくね」「よろしく」
　日和と直治に言われ、都も「よろしく」と返す。そして日和は和風パフェを、直治はカボチャのパイを注文した。
　クラシック同好会に所属している直治としては、和楽器にも興味があった。普段弾いている鍵盤打楽器似た類の楽器は和楽器にはない故、扱いに自信は無いが、可能なら弾いてみたい、という思いもある。
（イベントの後にでも、聞いてみようかな……）
　そんな事を思っていると、傍らの日和と目が合った。
「どうしたんだ、先輩？」
　気になって直治が聞くと、日和は楽しげに
「ん？　和楽器の演奏ってってあんまり聞く機会がないから新鮮だなーって思ってたんだよ。寝子高の芸術科の子でも、和楽器専攻の子ってそんなにいないような気がするし」
「確かに、あんまし聞いたことないかもしれんねぇ」
　都がそう相槌を打てば、日和は「不思議な感じするよね」とにっこり。直治もまたそんな風に思い、演奏に心地よさを覚えながら肯く。
「今度、民族楽器とかも聞いてみようかな。……あ、パフェが来た～♪」
　日和が振り向くと、店員がパフェとパイを持ってきてくれた。パフェは普通のサイズでも食べ応えのありそうな物で、とっても美味しそうだったし、パイも艶やかで匂いをかげばお腹が鳴りそうなほどである。
　直治は少し表情が和らぎながら和装にもほっこりしていた。
（こんな格好でハロウィンを楽しむなんてことはなかったですね……。寝子島はやはり面白いところです）
　と、その時。日和は都にこう持ちかける。
「ねぇ、一口どう？」
「え？　いいのん？」
　パフェのカボチャアイスをスプーンですくい、都に進める。目をぱちくりさせた都が問えば、日和は肯く。お言葉に甘えて一口貰えば、濃厚なのにくどくない、絶妙な風味のカボチャアイスに都は幸せな気持ちになる。
「ありがと。すっごく美味しい……♪」
　瞬間、都にとって嬉しい事が３つ重なり、ろっこん『シアワセウサギ』の発動条件が揃う。これがどんな効果を齎すのかは、まだ分からないが、何かしらの幸福が、周囲の人たちに訪れるかもしれない。
　因みに、日和は直治にもアイスを進めたが、直治は少し恥ずかしくなって丁重に断った。

　和楽器の演奏が始まり、ある程度三味線や琴の演奏を見た刀は、静かに目を閉ざして音楽を体全体で感じ、楽しんだ。力強い三味線の音色と雅やかな琴の音色に、少しずつ精神が研ぎ澄まされるような感覚がして、身が引き締まる。
　バチに、爪に弾かれ震える弦。合わせて空気は震え、音を出す。脳裏に映し出されるイメージに、耳から入り、三半規管を震わせる音に、刀の心も震えていく。体の底から力が沸くような感覚がして、活力を貰ったような気がした。
（凄い力だな）
精力的な演奏を目の当たりにし、刀は自然と微笑んでいた。間近でそれを見た時子は、その笑みの力強さに、思わず姿勢を正した。
（私も、このような演奏がしたいですね……）
　そう思いつつお茶を口にしているうちに……胸の奥で何かが音もなく弾けていく。その震えのままに音楽を聴いているうちに、自然と瞳を閉ざし、体で音を感じていく。彼女は、自分もステージで奏でてみたい、と思い始めていた。

　暫くして、時尾は緊張しながらもステージへと進む事にした。
（次の演目は、弾けそうです。飛び入り歓迎です、ともアナウンスされましたし……、行きましょう！）
　出る事を告げれば七星は応援してくれた。時尾は思い切ってステージに上がり、それに続いたのは、時子であった。
「では、行って来ますね……」
「ああ。楽しみにしているよ」
「がんばってね！」
　刀と沙穂に応援され、時子は小さく微笑んで一礼した。七星も時子に微笑み、肯いていると……。
「お！　七星ちゃんも来ていたのだ」
　不意に名を呼ばれ、七星は振り返る。と、小天狗に変装した真央がいた。
「あら、後木様も来ていたのですね？」
「そうなのだ。一緒にスイーツ食べましょうなのだ」
　そう言えば、七星はくすっと笑って、ここで和楽器のステージを見ませんか？　とお誘いするのであった。

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