魔法少女　マジカル☆テラ子｜リアクション

魔法少女　マジカル☆テラ子

【魔法少女☆無双〔1〕】

　さて、同じ頃。
　街のあちこちでも大勢の魔法少女が『こちら』に召喚されていた。

　維都月茉菜には現実世界での記憶があった。

「うわぁ……。また神魂のせいで変なところに来ちゃったよ～」
　空を埋め尽くすエイリアンに、茉菜は苦い顔をする。
　と、そのとき。
『維都月茉菜"も"魔法少女である』
　例のあの声が茉菜の頭の中に直接響いてきた。
「……魔法、少女？」
　首を傾げ、茉菜は呟く。
（これはチャンス？）
　と、茉菜は思った。というのも、彼女は最近自分のろっこんが物理攻撃系でないことに少々不満を抱いていたのだ。
「よし、そうと決まれば――本気！　出して！　狩ります！！☆」
　きらり、と瞳を輝かせて、茉菜はその場のノリで思いついた変身の呪文を唱えた。
　刹那、眩い光が彼女の身体を包み込んだかと思うと、彼女はもう変身している。
「魔法少女《マジ狩る☆シャウナ》！　ここに爆誕！」
　キリッと決めた茉菜の出で立ちは白を基調としたゴシック調ミリタリー魔法少女だった。ボタン多めの衣装とステッキ代わりの白の日傘が印象的な服だった。
　と、その次の瞬間、魔法少女の存在を認めたオクトパスが茉菜のもとにわらわらと押し寄せてくる。
「むっ、来たわね。これはもういきなり決め技放っちゃうしかないよねっ！」
　オクトパスの口から発射される液体を日傘で防ぎつつ、茉菜はピンと立てた人差し指で狙いを定め、
「――アナタのハートをリアルでばきゅーん！☆」
　必殺の決め台詞を口にした。
　刹那、茉菜の指先から放たれる一筋のビームが一直線上にオクトパスを捉え、その中心に穴を穿つ！
『！？』
　次の瞬間にはオクトパスは悲鳴を上げて――爆発した。
「……物理決め技……いい……！」
　茉菜は未曾有の快感に涙を浮かべていた。
「よーし、こうなったら街にエイリアンの屍の山を築いちゃうよ！」
　こうして殺る気満々の茉菜による魔法少女無双の第一幕が始まる。

　同時刻。別の場所で。

「首が……首が首を求めています！」

　屋敷野梢は何故かちょっと病んでいた。
「エイリアンの首のニオイがします！　たとえこの身が滅んでも、私はエイリアンの首を集めなければいけません！　それが私の生きた証！」
　本当に、何故かちょっとだけ彼女は地上波での放映が難しいレベルに病んでいた。おそらく交通事故で首がもげかけた（という設定上の）過去が梢の心の中の闇を解き放ってしまったのだろう。ちなみに彼女は現実世界での記憶がなかった。
「エイリアンの首は、我が誉！　今こそ変身――ミラクル・クビキル・アイシテル！」
　梢が魔法の呪文を唱えるや否や、彼女の衣服は光の粒となって弾け飛び、次の瞬間には彼女の変身はもう完了している。

「さあ、一緒にクビりましょ！」

　屋敷野梢は《首狩りの天使》だった。
　彼女はその名に違わぬ光の大鋏を取り出すと、次の瞬間にはいつのまにか目の前に現れていた巨人に肉薄し、チョッキンしていた。
　チョッキンされた巨人は立ったまま絶命し――爆発。
「……あ、そういえばニャースベーダーにも首はあるんですよねー？　だったら……もう何も怖くありませーん！」
　むしろお前が怖いわ、と誰かが言った気がした。

　かくて、魔法少女無双第二幕がその幕を開ける。