魔法少女　マジカル☆テラ子｜リアクション

魔法少女　マジカル☆テラ子

【ＶＳニャース・ベーダー 3】

「――３ｍの巨人か。おあつらえむきじゃないか。超鋼魔神フェノメノンッ」
　刀の目の前にバンカラ風衣装に身を包んだ一人の少女（？）――絹織真由良が姿を現し、巨大ロボットフェノメノンに変身した！
「……へぇ、鋼の巨人、ね……。なるほど、巨人には巨人ってわけね」
　ベーダーは突如現れた鉄の巨人を不敵な笑みを浮かべて見上げる。
「けれど、私の配下はタイタンだけじゃないのよ！」
　ベーダーが片手をあげてサインを送ると、空中で待機していたオクトパスらがフェノメノンの頭部に一斉に白濁液を発射する。
「そんな液体が効くかよっ……って、うわっ、カ、カメラにかかって前が……！？」
　慌てて鋼の指先でツインアイの部分を拭うフェノメノンはちょっと間抜けだった。
　と、そこに容赦なく巨人が接近し、金棒を振り上げてくる。
「……右だっ、フェノメノン……！」
　咄嗟に叫んだのは刀だった。
　それに真由良は素早く左にステップ、金棒の回避に成功する。
「……くっ。悪い、助かった……！　くそ、でも汚れがちゃんと取れない」
　なんとか半分ほど取り戻した視力を頼りに真由良はやや苦戦しつつ応戦を開始する。
「おーほっほっほ！　巨大ロボットも口ほどにはないわね。……ん？」
　と、そのとき、ベーダーは足元についさっきまでなかったはずの携帯電話を発見する。
　それも、よく見ると着信中だった。
「……？」
　なんとなくベーダーはそれを拾い、
「もしもし？」

『私、コズエ。今、貴方の真上にいるの。一緒にクビりましょうよ？』

「は……？」

　彼女が思わず上を見上げたとき、そこにやってきた一匹の蝶が一人の魔法少女――首狩の天使こと屋敷野梢に姿を変える姿があった。

「――なんか思ってたのと違いますけど首は首ですよね！　というわけで、ベーダーさんの首級頂いちゃいます――必殺《でゅらはん・らぷそでぃ》！」

　彼女がその技名を叫ぶや否や、彼女周囲に無数の光の蝶が乱舞し、それらがベーダーの首を執拗に狙う！

　だが、しかし。
「え？　首ぐらいあげてもいいけど」
　と、ベーダーはおもむろに自分の頭部をかぽっと取り外してみせた！
「え！？　もしかして首が無くても死なないタイプの人です！？」
　それもう人じゃねぇよ、と誰かが突っ込むよりも早くベーダー（首なし）の光の剣が梢に突っ込みを入れて、彼女の身体が空に吹き飛ばされる！
「ど、どうやらここまでのようですね……！　でも、後悔はしてません！　たとえ私の首がもがれても、クビキル・ミラクル・アイシテルゥウウウウウウウウ！」
　梢はおそらくこの世で一番ヤバい感じの捨てセリフを残して――爆発した。

〔Notice〕
　retire――首狩の天使（屋敷野梢）

「……あのそらりんとかいう変態娘といい、今の闇堕ち少女といい、この星にはまともな魔法少女の方が少ないんじゃないかしら……？」
　ベーダーがぽつりと言ったが、きっとあの二人もこいつにだけは言われたくなかったと思われる。

「さて、いい加減に遊びは終わりにしましょうか――タイタン？」

　おもむろにベーダーが巨人に言った。
「え……？」
　すると、ふいに巨人が糸の切れた操り人形のように力を抜いた。
　と、同時に巨人の頭の上にアラビア数字で「５」の表示が浮かび上がる。
（これってまさか……！？）
「……ッ！」
　真由良は次の瞬間には動いていた。火事場の馬鹿力で巨人を抱えて、誰もいない海の方へ全力で走る。

「……間に合えっ、フェノメノン！」

　スピーカーで増幅されたような真由良の声が迸る。
　カウントダウンが遠くの空で無情にゼロを告げる。
　刹那、フェノメノンは遠くの空の下で巨人もろとも――爆発した。

〔Notice〕
　retire――本気狩流（まじかる）★オニキス（絹織真由良）

「……あら、余計な真似を。まあ悪くない散り際だったわね」
　それに呆れと感心がないまぜになったような口調で言うベーダーと、
「くっ……！　無茶しやがって……！」
　悔しげに地面を拳で叩く刀。

「ふふ、あなた達はよく頑張ったわ。さあ、そろそろおしまいにしましょう？」

　ベーダーは邪悪な笑みを浮かべ、光の剣を手にゆっくりと刀に近づいてくる。

「武士の情けで、サムライ少年はちゃんと剣で終わらせてあげる」