沈黙の恋人たち｜リアクション

沈黙の恋人たち

　支援部は発奮する。

　――前回の悲劇、繰り返すまじ。

　地理が手におえないなら、まず世界史。

「そういえば世界史なんかは、漫画で分かりやすく説明してる本とかあるよね！」雅人がひらめく。「この図書館にもあるかなー？」
　小淋は頷く。普段からアルバイトを寝子島図書館で行っている小淋。『置いてある棚の場所も、覚えました……！』

　心強い！　さすが支援部部長！

　雅人と小淋が立ち上がる。『あまり多すぎても、より頭を使うだけですし、最低限の参考書を用意しましょう！』

　ものの数分とかからず、三人は世界史マンガを抱えてくる。
　かなりの大部で、詳しい内容だ。歴史の内容を追いつつ、教科書の記述と照らし合わせていく。
　それでもよくわからない微細な点は、小淋が図を交えて説明していく。

「千鳥、読み終わったら俺にも読ませてくれ！」刀が奮起する。
　手渡しながら、雅人が言う。「生物なら、力になれるよー」
　刀は頷く。小柄で華奢な彼だが、いざとなると頼もしい。
　他人を守り、他人を助けると誓った自分が、励まされ、助けられている。
　周囲がそうして手を伸ばしてくれるのが、刀の人徳であり、築き上げた信頼だった。

「地理のマンガはないのか！」刀が叫ぶ。
　国を擬人化した漫画はあるが、さすがにそれはおいていない。
「貸出資料に、こんなのがはさんであったけど……」雅人がチリの落書きを示す。形が似ていなくもない。
「マンガは大事だよ！」刀が手を挙げる。「勉強飽きた！」

　はたして、刀のテストの結果はどうなるのか。
　誰よりも早い男。だが、ことテストに関する歩みはゆっくりだ！