沈黙の恋人たち｜リアクション

沈黙の恋人たち

「わるいおにを、せいばつだー！！」
「おおーっ！！」

　ひよどりと瑞麗が、同時に声を上げた。
　水樹は勢い込んで、ノリノリで紙芝居を続ける。

「さー、続きまして『シンデレラ』！」

　ぱちぱちぱち。

「ああ、私もお城の舞踏会に行きたい……」

　そういって、水樹は悪戯心いっぱいに『ももたろう』の紙芝居をつかみ取る。

「えい！　わるいおにを、せいばつだー！」
「おおーっ！」

　熱狂の歓声が沸き上がる。

「もーもたろさん、ももたろうさん、おこしにつけた、きびだんごー」
「きびだんご、おいしそー！」

「さー、続きまして『白雪姫』！」

　ぱちぱちぱち。

「さあ、このリンゴを食べてごらん……」

　声色を作って読んだ後、おもむろに紙芝居をめくる。

「えい！　わるいおにを、せいばつだー！」
「おおーっ！」
　
　ひよどりと瑞麗が、同時に声を上げた。

　必ず鬼退治をすると、反応を返してくれる。
　何度やっても、喜んでくれる。
　しかもまったく同じタイミングで声を上げ、喜んでくれる。
　あまりにワクワクしている感じが伝わってくるので、水樹は急遽予定を変更し、即興で桃太郎に話をつなげることにした。
　悪い継母、悪い姉、悪い魔女。
　片っ端から桃太郎が成敗していく。衝撃のコラボだ。

（ひとつ、人の世の生き血を啜り……）

　古書に詳しい水樹。そんな冗談でこっそり笑う。
「もーもたろさん、ももたろうさん、おこしにつけた」そこまで言って、水樹は思わせぶりな間を取る。
「みんな、何団子がすきかなー？」
　はい、と麗瑞が手を挙げる。「胡麻だんごー！」
　はい、とひよどりが手を挙げる。「みたらし団子ー！」
　二人は、ちらっと顔を見合わせる。
　水樹はちょっと考え、にっこり笑う。
「おこしにつけたー、ごーまみたらしだんごー！」
　ちょっと早口だったが、わあっと一座が華やかな笑いに包まれた。

　ひよどりと瑞麗は、顔を見合わせて笑う。
　お互いが笑っているのをみて、さらに笑顔をつくる。