沈黙の恋人たち｜リアクション

沈黙の恋人たち

ちー、ちちち。
神妙な顔をして、猫を構っているのは、綾辻綾花。

　本が大好き、図書委員として活躍する彼女。
　図書館にも、頻々と出入りをしている。
　テスト最終日を明日に控え、今日は教科書、ノートを持ち込み、総仕上げを行っているのだ。

　テスト中日というのは、独特のムードがある。
　疲労と倦怠、緊迫感の中にも、どこかのんきなムードがある。
　すでに絶望して、どこか清清とした顔。
　明日に望みを託す、悲壮な顔。

　ことに今回の中間テストは『エクストリーム！』を標榜し、歴代まれにみる高難度のミッションが一同に課された。
　疲労は全身を苛んでいたが、それでも精気は充実、瞳は煌めいている。
　
　綾花も充実した気分で図書館に来訪。
　お弁当もお茶も用意。文庫サイズの猫写真集も猫メモももちろん忘れない。準備万端である。
　顔見知りの職員と挨拶をかわし、自習スタートである。

　ーー時間を忘れるほどの没頭。いい調子だ。
　軽く伸びをして、猫メモ片手に階下に降りる。
　新刊図書を教わったり、お気に入りの猫写真集で癒され、気分転換を図るのだ。

（……）
　エントランスのところで、じっと身を伏せている猫と目が合った。
　見かけない猫だ。大柄で、体格がいい。
　近寄っても嫌がる気配はない。頭がいいのだろう。
　喉を触ると、ごろごろとなついてくる。
　
　……テストも半ばを終えた。
優先順位が、勉強より猫に上がる時間があってもいいだろう。

　そんな綾花の隣にしゃがみ込むのは、浅山小淋。
　同じ図書委員会で、本の整理などで忙しく働く。
　綾花は該博な小淋の本の知識に驚き、小淋も綾花の本に対する愛情を好もしく思う。
　軽く会釈をして、小淋はスケッチブックを提示した。

『新しい本が入りました。猫写真集ですよ』

　図書館でアルバイトもする彼女、しっかり新刊は確認している。
　ぱっと笑顔になる綾花。

　猫的にも充実した時間が過ごせそうだ。

　綾花に挨拶して、小淋は二階へ向かう。
　勉強会なのである。

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